筆者が考えるに、クラウドコンピューティングのプロバイダーは、マーケティングという難題を抱えている。考えてみてほしい--プロバイダーは採用しているサービスモデルや配備モデルにかかわらず、できる限り多くの顧客の「一般的なニーズ」を満たしつつ、自社のサービスを差別化していく必要がある。つまり、プロバイダーは一般的なニーズを満たすサービスと、意図的な顧客の囲い込みと指弾されかねない独自サービスとの間でバランスをとりながらビジネスを行っていくことになるだろう。
一方、「サーバサービスやストレージサービスを検討している」顧客の観点から見た場合、選択対象となるサービスは多いものの、いずれも本質的にLinux上やWindows上で稼働しているサービスを使って顧客ファイルの格納を行うというものとなっており、選択に困るということになる。顧客はどのようにして選択すればよいのだろうか?詰まるところ、クラウドプロバイダーは、他社との違いをどのようにして顧客に伝えればよいのだろうか?
残念なことに、このところ耳にするクラウドサービス関連の発表は、どれも似たり寄ったりなものが多い。例を挙げると、ホスティングプロバイダーによる「従量課金制のオンデマンドサーバ機能の発表」がある。また、プラットフォームベンダーによる「サポートする言語の発表」や、「サービス料金の発表」もそうである。一方、SaaS(Software as a Service)ベンダーは機能1つを取ってもさまざまな差別化を行うことが可能であるため、他のベンダーに比べると苦労が少なくて済むだろう。とは言うものの、クラウドによるサービスを提供しているという事実以外の差別化要因を見出すことに苦戦しているベンダーもある。
こういった現状を放置しておいてはいけない。ForresterのJames Staten氏によると、クライアントは「クラウドに辟易としつつある」という(同氏のtweet)。その大きな原因は、一部の製品やサービスに見受けられる「クラウドウォッシング」(訳注:「クラウドのように見せかける」という意味を持った造語であり、環境に配慮しているように見せかける「グリーンウォッシング」という言葉に由来している)のばかばかしさ(関連英文記事)や、特にIaaS(Infrastructure as a Service)の世界において言えることだが、クラウドサービスと称するものの宣伝文句がありきたりであるという点にあるだろう。
以下では、クラウドコンピューティングにおいて重要となる差別化要因を5つのカテゴリに分類している。これらがすべてというわけではないし、筆者もすべてのベンダーがこれらの課題を同じ視点から捉えるだろうとは考えていない。しかし、あなたがクラウドサービスの利用を検討しているのであれば、それがSaaSであろうとPaaS(Platform as a Service)であろうと、あるいはIaaSであろうと、サービスの評価に際してこれら5つのカテゴリに最初に目を向けることになるはずだ。また、あなたがこういったサービスを提供する側の立場なのであれば、以下の内容を次回の提案資料の概略として検討するのもよいだろう。