Googleは「O3D」と呼ばれるブラウザプラグインのプロジェクトの一部を中止し、Mozillaを中心に開発が進められてきた「WebGL」3Dウェブグラフィックス技術に力を集中することを決めた。
ゲームなどのアプリケーションの基盤として、ハードウェアアクセラレーションによる3Dグラフィックスをウェブで利用しようとする開発者にとって、作業を簡略化できる可能性を秘めた今回の方針変更は歓迎すべきことだろう。しかし、試験的なものとはいえうまく機能するO3D技術が、当面は出発点に戻ることになる。
だが、WebGLが提供する3Dの基本的な部分より高いレベルでインターフェースを提供しようとするO3Dの全体的な構想がなくなったわけではない。GoogleはO3Dを、WebGLという基盤の上で利用できるプリビルドのソフトウェアライブラリとして再構築するつもりだと、エンジニアリングディレクターのMatt Papakipos氏とソフトウェアエンジニアのVangelis Kokkevis氏が、O3Dに関するブログへの米国時間5月3日付けの最終投稿に書いている。
O3Dについての新しい方針で大きく変更されたことの1つは、「C++」で書いてコンパイルした高速で動作するプログラムの代わりに、ウェブアプリケーションで利用するには動作が比較的遅い「JavaScript」をO3Dのライブラリが利用することだ。このプロジェクトにとって幸いなことに、ブラウザを提供している上位5社、Microsoft、Mozilla、Google、Apple、Operaのすべてが、JavaScriptの実行速度を大きく改善している。
他に問題になりそうなのは、WebGLが、「Mac OS X」や「Linux」のほか「iPhone」や「Android」ベースの携帯電話で利用される「OpenGL」と呼ばれる3Dグラフィックスインターフェースをベースとしていることだ。一方「Windows」では、Microsoftのインターフェース「Direct3D」が主流だ。Googleは、OpenGLのコマンドをDirect3D向けに翻訳する「ANGLE」プロジェクトで、双方の橋渡しをしたいと考えている。
Papakipos氏およびKokkevis氏は次のように記している。
われわれはこれを簡単に決めたわけではない。WebGLに関する初期の話し合いでは、OpenGLのような低レベルのAPIを駆動するのにJavaScriptでは遅すぎるという懸念がわれわれにはあり、O3Dのような高レベルでのアプローチのほうが良い結果を生むだろうと自信を持っていた。さらにわれわれは、Windows搭載マシンの多くにOpenGLドライバがインストールされていないことも認識しており、これがWebGL普及の障害になりかねないと考えていた。
しかしその後、JavaScriptはずいぶんと高速になった。WebGLを使って開発者が作成したデモにわれわれは大いに感銘を受けたし、ANGLEについては、OpenGLドライバがインストールされていなくても、Windowsを搭載したコンピュータ上で「Chromium」がWebGLコンテンツを扱えるようになると思う。
しかし、他にも障害は残っている。Apple、Mozilla、Opera、GoogleはWebGLのサポートに取り組んでいるが、Microsoftは次の「Internet Explorer 9」でブラウザを大きく変えようとしているにもかかわらず、WebGLにはあまり興味がないようだ。
MicrosoftのInternet Explorer担当ゼネラルマネージャーであるDean Hachamovitch氏は、先週の取材で同社のWebGLに対する取り組みに関する質問を受け、「それは別の方式と考えている」と答え、ブラウザ上でユニバーサルにサポートされるものではないという考えを示唆した。
Googleの見出した対処法は「Google Chrome Frame」だ。これはInternet Explorerで「Google Chrome」の機能を使えるようにするIEプラグインだが、Microsoftはこのやり方を激しく非難している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ