マイクロソフトの「すべての人が使えるPC」を実現するための取り組みとは

藤本京子(編集部)

2007-03-14 20:28

 マイクロソフトは3月14日、同社のアクセシビリティとユーザビリティに関する取り組みについて、記者説明会を開催した。アクセシビリティとは、高齢者や障害のある人を含むすべての人がITにアクセスしてその恩恵を享受できるようにすることで、ユーザビリティとは、ユーザーがすばやく正確に目的の操作ができる使いやすさや使い勝手のことだ。

 まずアクセシビリティへの取り組みについて、マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフトディベロップメント 次席代表の加治佐俊一氏は、「日本では調布技術センターにて約10年取り組んでいるが、米Microsoftではすでに1988年より約20年間に渡って進められている。製品の機能としては、Windows 95とOffice 95で初めてアクセシビリティ機能を組み込んだ」と説明する。

加治佐氏 マイクロソフト CTOの加治佐氏

 その後、1997年には他ベンダーのアプリケーションからもアクセシビリティ機能が実現できる「Microsoft Active Accessibility(MSAA)」をリリースした。これにより、例えばスクリーンのメニューのデータを読み取り、スピーチエンジンが音声に変換するといったようなことがさまざまなアプリケーションで実現できるようになった。また、2005年にはMSAAをさらに進化させた「UI Automation(UIA)」をリリースし、これまでアプリケーションごとに実装していたアクセシビリティ機能が、OSレベルでどのアプリケーションでもある程度実現できるようになった。

 ユーザビリティへの取り組みも、同じく1988年に米国にて開始、日本では1994年に調査活動が始まった。米国で開始した当初は、ユーザビリティエンジニアは2名のみで、4つのラボにて44名がユーザビリティ調査に参加、調査件数も3件のみというものだった。それが現在では、「ユーザーエクスペリエンスリサーチャーを150名配置し、ラボも日本での2カ所を含め、全世界に50カ所ある。ユーザビリティ調査の参加者も延べ1万人以上で、調査件数も1500件にのぼる」(加治佐氏)という。

 ユーザビリティ調査では、ディスカッションでのフィードバック収集はもちろん、実際の操作で使いづらいところを見つける作業や、ベータ版の試用によるフィードバック、訪問調査などが行われている。また、日本では行われていないが、特殊な機器を使用してユーザーの目線の動きを調べる調査している。実際に「Officeの『検索』コマンドを見つける」という課題を与えてユーザーの目線をたどり、このコマンドが見つけにくいという結論に達した同社では、次期バージョンでコマンドがより見つけやすくなるよう改善した。

東京大学との取り組みも開始

 マイクロソフトは同日、東京大学 先端科学技術研究センター バリアフリー分野と共同で、障害のある若者が最新技術を活用しつつ、高等教育とキャリア構築において成功をおさめるための支援を行う「DO-ITプロジェクト」を発表している。DO-ITとは、Disabilities, Opportunities, Internetworking, and Technologyの略だが、同時に「You can Do It!(君ならできる)」という思いも込められている。

 このプロジェクトの一環として、7月には大学進学を目指す障害のある高校生を対象に、ITを使った学習講座や東京大学での講義受講などを含む「DO-IT大学体験プログラム」を実施する。また、オンラインでのメンタリングや、障害のある学生が技術をいかに活用して学習できるかを事例として提供する予定だ。

ユーザビリティラボ マイクロソフト調布技術センターのユーザビリティラボ。ユーザーが実際に操作する様子を、隣のオブザーバールームで確認できるようになっている

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