SAPの最高経営責任者(CEO)であるHenning Kagermann氏とBusinessObjectsのCEOであるJohn Shwarts氏は現地時間10月8日、SAPのBusinessObjects買収提案に関する質問を受け流し、例によってわれわれには答えのない疑問が残った。議論の最も重要な部分は、米ZDNet.comの編集者Larry Dignanが同日に未解決のまま提示した次にあげるいくつかの質問に要約される。
--SAPは大型買収を消化し切れるのか
即座の答えはイエスだ。SAPはBusinessObjectsを独立した事業体として残すことにより、おそらくはOracleがHyperionを買収したときに経験したとうわさされる消化の問題をいくつか経験しなくて済む可能性が高い。たとえば、私が聞いたところによるとHyperionの人間はOracleが必ずしも期待したほどHyperionの事業内容を理解していないと見ているという。しかし、今回の買収では費用削減の相乗効果のチャンスは制限される。私が話をした人間は誰も、特に最近の失敗を考慮するとBusinessObjectsがいつまでも独立した企業のままでいるとは考えていない。SAPが今回の買収を最大限に活用しようと思うなら、公表された2億1000万〜2億3000万ユーロの年賦償却を超える大幅な合併効果を出す必要があるだろう。
--なぜ戦略を転換したのか
Henning Kagermann氏は、今回の買収によってSAPは同氏の言うところの「ビジネスユーザー」市場のリーダーになることができることから、今回の買収を「戦略的」なものだと説明している。この分野はKagermann氏が認めているようにSAPがこれまで弱点だった市場区分である。この市場区分の顧客はSAPの現在の製品内容では獲得できないが、ビジネス分析製品があれば可能かもしれない。
BusinessObjectsがオンデマンド製品を提供しているという事実はSAPにとってプラスである。なぜなら、私が昨日述べたように、SAPのBusiness ByDesign戦略に対して即座の付加価値要素を提供できるからである。SAPがミッドマーケット(中堅企業市場)に深く浸透したいと考えるなら、ビジネス分析製品が優れた選択肢である。なぜなら、ビジネス分析製品はトランザクション系とビジネス情報のニーズの両方を組み合わせたものだからである。しかし何においてもそうなのだが、いざ実行してみると細かい部分で困難に遭遇するだろう。Kagermann氏は今回の買収によって顧客が「わずかに増加」する程度だと言い、顧客層の重複している部分が大きく、SAP以外の顧客の機会も限られていると指摘した。
顧客層の重複の問題については、SAPの過去のOutlooksoftの買収によっていくつかの厄介な問題が出てくるだろう。なぜなら、BusinessObjectsは優れたプランニングエンジンを持っているのだが、これがOutlooksoftと競合するからである。そのためにSAPが統合を目指していた既存のCarthesisとの関係が背景に追いやられてしまうのかは今後の進展を見守る必要がある。これらはいずれも買収の実利性に関する問題だが、統合が達成されるまでは明確にならない。
--SAPは払いすぎたか
市場がそれを決めるだろうが、9月中ごろに身売りのうわさが確実になってからBusinessObjectsの株価が上昇していることを考えると、20%のプレミアム価格は高すぎない。しかし、今回の買収によってSAPは2009年まで約20〜25億ユーロを借り入れて返済しなければならなくなった。これはSAPが今後2年間は別の大型買収に着手できない可能性が高まることを意味する。その限りにおいてはギャンブルだった。負債を抱えたSAPは、Oracleが自由に使用できるキャッシュを生み出し、したがって同社を魅力的な買い手に見せている高いマージンを活用して市場の一部を吸い取ることを許している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ