欧州委員会(EC)が、欧州の個人データ保護関連法を改正する計画を明らかにした。計画では、新技術の開発に際し、プライバシー保護対策を初期段階から設計に含めるよう企業に促す施策などを盛り込むという。
ECで情報社会およびメディア担当委員を務めるViviane Reding氏は、ブリュッセルの欧州議会において現地時間1月28日、欧州連合(EU)の「データ保護の日」を記念して演説を行った。その中でReding氏は、EUのプライバシー関連法を、技術の変化に合わせて新しくする必要があると述べた。具体的な変化の例として挙がったのは、日常的な商品におけるRFIDタグの普及、ソーシャルネットワーキングサイトの成長、新しいタイプのインターネット広告、および空港で用いられる全身スキャナなどのセキュリティ技術だ。
Reding氏によれば、新たな法規制は、EU市民のプライバシーに関する権利を保護するためだけでなく、業界に法的確実性を与えることにより、消費者の間で新技術の採用が進むようにするためにも必要だという。
さらにReding氏は、新たな法規制では、新技術の開発サイクルの初期段階からプライバシー問題を考慮するよう企業に促すことが必要だと述べ、このコンセプトを「設計によるプライバシー」(privacy by design)と表現した。
「設計によるプライバシーは、個人をさらに保護するだけでなく、新しいサービスや製品への信頼や信用を生み、ひいては経済にプラスの影響をもたらすものだ」と、Reding氏はECが発表した声明の中で述べている。
ECは、プライバシーに関して「EU全域を対象とした明確かつ現代的な規制」の整備を目指す意向を明らかにしている。
手始めとして、ECは1995年に採択した「EUデータ保護指令」の改正を行う計画だ(英国では、この指令に基づく「データ保護法」が施行されている)。
「EUの法規制は、飛行機に乗るとき、銀行口座を開くとき、ネットサーフィンをするときなど、生活のあらゆる場面において、自分の個人データが法律に従って処理されることを知る権利、拒否したい場合はいつでも拒否する権利があることを、すべての人が実感できる内容でなければならない」とReding氏は述べている。
さらにECでは、特に通信事業者やインターネットプロバイダーを対象とした電子プライバシー関連の法規制についても改正を行う意向だ。
しかし、法律事務所Pinsent Masonsの情報法専門家William Malcolm氏によれば、EUデータ保護指令の内容が大幅に変更される可能性は低いという。
「ECは以前、この指令の条項を抜本的に改正する計画は今のところないと明言している」と、Malcolm氏は声明の中で述べている。
Malcolm氏によれば、プライバシー保護を改善するのに法的枠組みを変える必要は必ずしもなく、必要なのはむしろ、組織が既存法の解釈の仕方を変えることだという。
「こうした目的の達成に役立ついかなる法改正も歓迎するが、求める成果を得るために欧州当局がやるべきなのは、そのような方面における意識を高め、文化を変えることだ」とMalcolm氏は語った。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ