エンロンの会計不祥事を契機に、2002年に成立し、2003年より適用が始まった米SOX法に関しては、2004年の11月中旬から適用企業の内部統制に関する報告書が公表されている。しかし、現時点で公表されているのは、米国において1万7000社を越える一般公開企業のうちの約2割に相当する「大規模早期適用会社」に限られている。一方で、残りの8割に相当する、中小規模企業については、十分な内部統制環境が整わないことから、度々適用が延期されており、その公表が始まるのは、2007年の7月中旬以降からと言われている。
八田氏は、そうした現状を説明した上で、米国における内部統制に関する全体的な状況については「丸5年たった現在でも、われわれの目には見えていない」と指摘。合わせて、その状況は、現在も刻々と変化を続けていることを付け加えた。
米SOX法とは異なる日本の内部統制報告制度
このセッションでは、日本におけるいわゆる「日本版SOX法」の現状についても触れられた。6月に成立した金融商品取引法に基づき、今後、企業会計審議会によって公表される内部統制基準に従った内部統制報告制度が開始されることになる。この内部統制基準については、2005年の4月に公開草案が出され、12月に部会報告という形で提出されている。現在は、企業会計審議会総会の承認を得て正式に公表されるのを待っている段階である。加えてこの基準は、汎用的、普遍的な考え方を示したものであり、より具体的なガイドラインは、別途策定して公表される予定という。
青山学院大学大学院、会計プロフェッション研究科教授の八田進二氏。
そうした現状にもかかわらず、日本での内部統制報告制度が、米国のSOX法(企業改革法404条)の内部統制関連規定とまったく同じであるかのように認識し、対応のための取り組みやアドバイスが行われている現状に対して、八田氏は「冷ややかに見ている」と懸念を表明。そうしたアプローチは「誤りである」と明言した。
一方で、「とはいえ、企業の経営者が、外部からすべて与えられなければ内部統制の構築や評価ができないというのも滑稽な話である」とする。八田氏は、「個人的な意見かもしれないが」と断った上で、「昨年来から日本で起きている内部統制議論のほとんどすべては、経営者が不在であるように感じる」とした。
「内部統制議論の主人公は経営者。経営者が自分自身の目で、企業経営を有効かつ健全に行うために必要な手続きや組織体系、プロセスを作り上げていくことこそが“内部統制”であることを理解してほしい。それはまさしく“経営管理”そのもの。内部統制が有効に機能することで、企業の競争力、企業価値が高まり、ステークホルダーに対して企業責任が全うできるというベネフィットが生まれる。そうしたベネフィットがなく、この新しい制度において発生するのがコスト負担のみであるのなら、そうした制度は淘汰されるはず。そこを見誤らないでほしい」(八田氏)
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