これからのIT業界に求められる人材は、ビジネスとITを橋渡しできる「システムアーキテクト(SA)」――。NTTデータと野村総合研究所(NRI)が2月26日に開催した「ITと新社会デザインフォーラム2010」で、NTTデータ経営研究所 情報戦略コンサルティング本部長パートナーの三谷慶一郎氏がIT人材像について提言した。
三谷氏は「新たなIT人材像とITサービス産業の変革を目指して」と題し講演。日本の社会と産業が転換期を迎えるなか、求められるIT人材像について語っている。
技術と経営スキルを持つ「ギークスーツ」と設計としての「デザイン」
三谷氏は日本が抱える諸課題として、国際競争力の低下と労働生産性の低迷、人口の減少や少子高齢化などを挙げている。2050年には4人に1人が75歳以上となり、労働人口は現在の水準に比べて4割減少する見込みという。
三谷氏は、「このような諸課題に直面するのは、世界を見ても日本が初めてのものが多い」と指摘する一方で、「これらの解決策がそのまま(日本の)グローバル展開に生かせる」と訴える。日本は、これまでの提案依頼書(RFP)から企画提案型産業へ、ITを提供するといった労働集約型から仕組みを提供する知的集約型産業へ、それぞれシフトする必要があるとしている。
このためには、ビジネスとITを橋渡しでき、新たなビジネスモデルやライフスタイルを作ることができる人材「システムアーキテクト(SA)」が必要になると提言している。システムアーキテクトは、構想を立案する能力と実現する能力をあわせ持つ人と定義。技術と経営の両方のスキルを持つ「ギークスーツ」と、ビジョンを設計する意味としての「デザイン」といった素質が必要になるという。
三谷氏は、日本では技術と経営、文系と理系など、両者のキャリアパスが断絶している状況にあると指摘。その結果、両方の能力をあわせ持つ人材育成が行われていなかったという。人材育成には、大学教育でビジネスと接点を持たせたり、社会全体として情報活用を阻害する制度や仕組みを見直したりする必要があるとしている。
なお、別稿でNRIコンサルティング事業本部 副部長・執行役員の三浦智康氏による講演「ITと変貌する社会インフラ」を紹介している。