欧州の事情が米国とこれほど違うとは皮肉な話だ。米国は、デジタル著作権管理(DRM)、全米レコード協会(RIAA)、全米映画協会(MPAA)などとともに、21世紀の知的財産を20世紀の発想でパッケージ化して販売することに固執して、デジタル配信の未来に愚かにも激しい抵抗を続けている。一方で欧州は、実際にデジタル配信の未来に投資している。具体的には、欧州連合が「BitTorrent」のPtoP技術を使うプロジェクト「P2P-Next」に2200万ドルを出資する、とブログ「TorrentFreak」が伝えている。
そう聞けば、欧州の放送局はこの動きに反対しているに違いない、と思うのも当然だ。何と言っても、TorrentFreakが示した調査によると、BitTorrentユーザーの50%はテレビ番組を「盗む」ためにPtoPを利用しているというのだからだ。ところが、このブログ記事を書いたErnesto氏が指摘するように、欧州の放送局は、この状況は脅威というより、チャンスをもたらすと考えている。
P2P-Nextに参加している最大手の放送局の1つはBBCで、同局はこの新しいBitTorrentクライアントを利用してテレビ番組を配信する予定だ。同プロジェクトのパートナーにはほかに、欧州放送連合(EBU)、英ランカスター大学、Markenfilm、Pioneer Digital Design Centre、フィンランド技術研究センター(VTT)などが名を連ねる。将来の主な目標は、ライブストリーミングをサポートするBitTorrent互換クライアントをオープンソース方式で開発することだ。
当面の取り組みとして、同プロジェクトは、放送局が(テレビ番組をダウンロードしている)オンライン視聴者に到達するよりよい方法を見つけて、高品質のテレビ番組をオンデマンド配信することを支援する予定だ。
せめて、デジタル化とダウンロードによって脅威にさらされている(そして、豊かになるチャンスがある!)米国の業界に働きかけることができたらいいのだが。ソフトウェア業界は実際、オープンソースをより本格的に受け入れるかもしれない。エンターテインメント分野については、ファイルが盛んに「共有」されていることから明らかなように、製品に対する需要は非常に大きいので、業界はこの需要から利益を生み出す方法を見つけるはずだ。
欧州連合はどうやら、PtoPから利益を上げる方法は、PtoPの最前線に立ち、違法性の高い手段で入手できるコンテンツよりも有利な条件でコンテンツを配信することだ、と認識しているようだ。その意味をよく考えてみよう。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ