「AndroidはWebスケールで個人をクラウドに接続する」--Androidカンファレンス基調講演

矢野りん

2009-12-01 14:35

 11月30日、東京代々木の国立オリンピック記念総合センターにおいて、日本Androidの会主催による「Android Bazaar and Conference 2009 Fall」が開催された。

 開催に先立ち、日本Androidの会会長の丸山不二夫氏が、「クラウドデバイス」と「メディア」の統合をテーマに基調講演を行った。

 丸山氏は冒頭、日本Androidの会が11月27日にNPO法人となったことを報告した。会員数4879人(2009年12月1日現在)の開発者コミュニティとして、今後支部、ならびに企業会員、女性や学生会員の拡大など、会員属性の多様化に注力すると述べた。

 また、これまでと同様に技術情報はもちろん、Androidマーケットの活性化に寄与し、ビジネスの経験を共有するといった、ビジネス面での啓蒙活動についても取り組みを強化するとした。

クラウドの推進力としての「Webスケール」

 講演の中で丸山氏は「ハードウェアの進歩だけでクラウドを見るのは間違い」と指摘した。「なぜハードのパワーが必要とされるのか」という問いの答えは、クラウドという概念の母体としてのインターネットクラウドがあり、インターネットクラウドの推進力として、量的に膨大で質的な数が絶え間なく増大しつづける「Webスケール」という規模の概念が成立した点をよく理解しないと見えてこないと強調した。

 その上で丸山氏は量的に大きく、質的に増大する情報がSNSを中心としたサービスの上で流通し、価値を生んでいる現代を「ネットワークへ個人が登場した」時代と表現した。この時代では、ビジネスが拡張すればシステムも拡張せざるを得ないというスケールアウトが恒常化する。今後こうした動きに対応する技術に、より一層関心を向けるべきだと語った。

 さらに丸山氏は個人とクラウドの関係を取り持つ新しいモバイルデバイスこそが「Android」であると述べた。Googleが開発中の新サービスで、電話音声通話の仕組みとその活用サービスをGoogleが1社で担おうという「Google Voice」の可能性に期待しつつ、Androidはケータイの世界をフラットな状態でクラウドにつなぐものとして、必然的に普及するだろうと予測した。

日本のICTビジネスは「高速道路に車がいない」状態

 後半の招待講演では総務省、情報通信国際戦略局 情報通信政策課長の谷脇康彦氏が「オープンモバイルビジネス戦略」と題して講演を行った。

 谷脇氏はまず、国家経済の1割は100兆円市場のITビジネスが支えているというデータを紹介。特に景気が良いときも悪いときもプラスの影響を与えるICT分野は国家の経済対策として常に強化し続けるべき分野であると述べた。

 しかしながら日本は、光ファイバの全国的な整備など、インフラ普及度の面では世界に類をみない高さを誇りながらも「高速道路に車が走っていない。つまりICTが活用されていない」という問題を指摘する。この点は、既存のマスマーケットを支える規模感がICT上にない点が原因だとして、新しい市場の形成が急務であるという認識を示した。

施策は「サイバー特区」

 解決策として総務省は「インターネット基盤を生かした新事業の立ち上げ」「コンテンツ市場の拡大」「ICTモデルのグローバル展開」の三本柱を目標に掲げるという。この目標を実現するための施策が「ICT利活用ルール整備促進事業(サイバー特区)」であるとし、現在サイバー特区の中で試験的に行われている日本雑誌協会主導による雑誌コンテンツのデータベース化および配信ビジネスの運用といった具体事例を解説した。

 谷脇氏は、「ブロードバンド化が進むとサービスのレイヤが必然的に分かれてくる。つまり、複数の事業者が連携する、コラボレーションしやすい環境が求められる」として、通信、放送の統合的法体系の見直しも含めた取り組みを進めて行きたいと語った。

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