カリフォルニア州サンノゼ発--サイバー犯罪者がユーザーとともにオンラインバンキングを利用し、口座の金を盗むという事態が起こっている。
以前は、パスワードを盗むトロイの木馬が大流行していた。このトロイの木馬は、ユーザーが悪質な電子メールの添付書類を開いたり、悪質なウェブサイトを閲覧したりすることで、PCに侵入する。だが、堅牢な認証システムが普及したことに伴い、サイバー犯罪者は戦略を変えつつあると、MessageLabsのウイルス対策シニアテクノロジストAlex Shippは述べている。
Shippは米国時間2月16日、当地で開催された「RSA Conference 2006」において、「最近では、ユーザー名やパスワードの盗難は減少している」と発言した。代わりに、「(口座から金を盗む目的で作成された)トロイの木馬」が、ユーザーがオンラインバンキングを利用するのを待ち受けるようになり、「金を外部へ送金している」のだという。
「いかなる認証システムが導入されていようと、ちょっとした仕掛けが施されていようと、生体認証が適用されていようと、役に立たない。犯罪者はユーザーを待ち伏せて、口座預金を盗み出している」(Shipp)
Shippによれば、こうした新種のトロイの木馬は現在増加傾向にあり、まん延している脅威の中でも3番目に多いものになっているという。なお、今日最も一般的である脅威は、ゾンビPCのネットワーク(ボットネット)を形成するのに悪用されるリモートコントロール可能なコードで、その次に多いのが、コンピュータユーザーをだまし、個人情報を提供するよう仕向けるフィッシング詐欺だと、Shippは話している。
口座の金を盗むトロイの木馬は、特定のオンラインバンキングサイトと連動するようにプログラムされている。「犯罪者は、標的とする銀行の数を増やし続けている」(Shipp)
このトロイの木馬は、電子メールに含まれるリンクとしてユーザーのPCに侵入することが多い。こうした電子メールには、例えばオンライングリーティングカードのような、一見無害と思われるサイトへのリンクが含まれている。「リンクをクリックすると、ブラウザに自己をインストールする実行ファイルがダウンロードされてしまう。このプログラムはその後、ユーザーがオンラインバンキングを利用するまで身を潜めている」(Shipp)
ShippとともにRSA Conferenceのパネルディスカッションに参加した、Boeingのセキュリティシステム担当シニアプロダクトマネージャJeanette Jarvisは、日増しに進化する攻撃に遅れを取らないようにするのは非常に難しいと語った。「昨今は攻撃手法にソーシャルエンジニアリングが取り入れられるようになり、社員は何をしてよいのか、あるいは悪いのか、区別するのがきわめて困難になっている」(Jarvis)
Jarvisによると、Boeingがゲートウェイ部分で遮断した悪質なソフトウェアの数は、2002年以来1万1000%も増加したという。中でも、フィッシングが特に大きな問題になっているそうだ。「こうした問題に対する万能策はない。ある攻撃を食い止める手段を考え出すと、犯罪者はすぐに次の手を打ってくる」(Jarvis)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ