IBMが、ウェブ上にあるストリーミングマルチメディアの利用で目の見えない人や不自由な人を支援するウェブブラウザ用ツールを開発した。
Microsoftの「Internet Explorer」、もしくはMozillaの「Firefox」といったウェブブラウザに対応する同ツールは、「Adobe Flash」形式や「Windows Media」形式のファイルなど、ウェブサイトに埋め込まれたファイルであればどれでも処理可能になっている。
IBMのWorldwide Accessibility Centerでディレクターを務めるFrances West氏は、「目の見えない人だからといって、YouTubeやMySpaceなどのサービスを楽しめない理由はない」と語っている。
ウェブ上での音声の普及は、視覚障害者にとって理想的に思えるが実際は違う。West氏によると、画面読み上げや音声合成に対応したウェブブラウザはテキストから音声への変換が主な目的で、マルチメディアに完全対応するには機能を調整する必要があるという。
オーディオやビデオのストリーミング時にマウスで「再生」ボタンをクリックしなくてはならない場合、通常はこれにキー操作が割り当てられておらず、画面上のコントロールボタンの配置も統一されていないと、West氏は語っている。「再生」ボタンを押せないと、マルチメディア機能を楽しむことはできない。
また、ページを読み込むと音声や動画が自動的にストリーム配信される場合でも、ウェブページの音声がユーザーの音声支援機能に干渉することが多い。
IBMの東京基礎研究所が開発したマルチメディアブラウジング支援ツールは、あらかじめ定義されたマルチメディア制御用ショートカットキーを、すべてのウェブサイトで提供する。「再生」や「巻き戻し」といった機能に加え、音量や再生速度もコントロールできる。
ビデオの制作者がメタデータを組み込んでおけば、同ツールはそれを読み込み、所定の動画の内容を説明するナレーションを再生することもできる。この機能は、視覚障害者向けの動画と同じコントロールボタンを提供する。West氏によると、選択に応じてオリジナル音声だけを聞いたり、画面にナレーションを表示させることもできるという。
IBMでは、同ツールをオープンソース化する予定で、来週開催される「2007 Technology & Persons with Disabilities Conference」でこれを披露することを予定している。
West氏によると、視覚および聴覚障害者(ハイテク製品に関してはこれまで対応が遅れてきた層)のためのソフトウェアは社会活動として開発すべきだ、というのが同社の方針だという。
West氏は、「これは、今後この分野から出てくる多くの研究技術革新の1つであって、単に障害者のためだけのものではないと思う。米国では約7600万人のベビーブーム世代の高齢化が進んでおり、彼らの視覚や聴覚は今後どんどん衰えていく。これからのアプリケーションは、このようなユーザーを考慮する必要があると思う」と語っている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ