もはやITは社会を支える大きなインフラであり、時にはライフラインともなりうる。2005年は、そのライフラインに大規模なトラブルが続発している。その多くは内部要因によるものである。このことはリスクを管理すべき範囲の広さを改めて教えてくれたと共に、内部で発生するインシデントに対して、いかに無防備であったか、という問題点を突きつけることになった。そこで今回、リスク管理のあるべき姿を求めて、リスク管理ベンダー3社のトップに話を聞いた(前編・後編に分けて掲載)。
出席者
木村裕之氏 シマンテック 代表取締役社長
大三川彰彦氏 トレンドマイクロ 日本代表
加藤孝博氏 マカフィー 代表取締役社長
(司会)石橋正彦氏 ガートナー ジャパン
ガートナー リサーチ ソフトウェアグループ リサーチ ディレクター
CSO、CIO制度は生産性向上に必須
石橋正彦氏 経営者のITに対する関与というのも、これから話題になるでしょうね。東証の社長があれだけシステムについて話をしていたように「うちの社長もあのくらい話ができなければいけない」となるかもしれない。
加藤孝博氏 仰るように企業のトップはシステムのことが分からないというのが一般的な認識になっていますね。確かに、たとえばアパレル業界や運送業界の社長が分からないというのは無理もない。

だから私が取り入れるべきだと思うのが、CSO(Chief Security Officer)などの制度なんです。コストの問題などもあるでしょうが、ある程度の企業はCSOを設けてほしい。システムを知らないでいいという認識のままではまた大きなトラブルにつながってしまう。その辺は我々ベンダーも啓蒙していく必要があると思いますね。
石橋 これからはユーザー企業に対して「CSOはどなたですか」とたずねて、まずCSOに対する意識を高める必要があるかもしれませんね。
大三川彰彦氏 日本ではCIO(Chief Information Officer)に対しても、米国に比べるとまだ認識が低く、決定権などの権限を持つ人が少ないのが現状のようです。ソリューションを提案しても、まず先に導入事例の情報を求められることが多いと聞きます。これはまだ、日本の経営者が「他社が使っているから自社も」という横並びの考えがあるためか、セキュリティによって生産性を向上させ、結果的に売り上げの増加につなげるという認識が低いためかもしれません。

企業の経営として重要なのは、ビジネスの継続性を守ることだと思います。これからの経営者はCIOやCSOという職務を持った人の必要性を認識し、セキュリティを企業経営の一要素と考え、そこに権限を委譲して企業内のコンプライアンスを確立し、ビジネスの継続性や生産性の向上を考えることが必要不可欠になってくると思います。
木村裕之氏 ITがこれだけ重要なのに、まだ経営者が横並びなんですね。自分の目で見ていない。ITに関して経営者は日々本当に心配だと思う。だからこそCIOやCSOを設けることが必要でしょう。今までのようにベンダーにまる投げにしてしまうと、ベンダーごとにシステムがバラバラになってしまう。そうならないためにもCIO、CSOを育ててトータルなシステムで外と内からの脅威から守っていくということが当然必要です。ITは事業インフラであり、事業を停めないというためにも。
石橋 事業継続計画とセキュリティとは不可分ですね。
加藤 経営の継続性という話だと、ひとつには今回の東証のトラブルのようなプログラムミスやDoS(サービス拒否)攻撃、脆弱性などを、平面的にではなく、総合的に統合した堅牢なシステムをどう構築するかが、我々ベンダーの仕事だと思います。また日本語の壁を想定するにしても、今後は国際的な共有が考えられます。そう考えても、脅威は国際化してくるでしょう。日本のセキュリティ対策は米国に比べるとずっと遅れている。

大三川 日本のビジネススタイルは性善説が基本であるといわれています。ところが海外では、性悪説を基本に考えるケースが多いこともあり、ビジネスを守るためのIT製品やサービスには適切な投資を行っています。現代社会はITを活用して業務を遂行することが基本となっていますので、会社を支えるシステムを守るためのセキュリティやアベイラビリティを高める対策も考えなければなりません。
しかし会社規模によってはCIO、CSOといった職位を設けることができない場合もあります。そのようなときは、企業の業務やシステムをよく知っている外部の専門家を活用するなどして、ITやセキュリティを効率よく利用しながら事業の継続性を考えていけばよいでしょう。また、リスク管理とクライシス管理をきちんと考えることも重要です。この両者を理解し、準備をしていくことが今後の経営者に必要なことなのではないかと思います。
ITをどう使うのかが経営者の責務
石橋 では、ITの強化によって企業の競争力が向上するものなのか、お聞かせください。
加藤 これは万人の認めるところで、中小企業、いわゆるSMBの意識が高まっています。セキュリティベンダーとして我々はそういったマーケットにフォーカスしていますし、オープン化による危険度に対する啓蒙活動はしていかなければならない。これからはSMBもネットで商売していきますから、我々のミッションはそれに対応できるソリューションを揃えることであり、ひいては企業の競争力を高め、生産性を高めて競争に勝つというわけで、日本の国力も上がっていくだろうと。
木村 結論としてはまさにその通りです。もはやITを利用せざるを得ないという背景がある。そこで考えなければならないのは、何をするためにITを活用するのか、ということです。それぞれの目的があるんですよね。ITを活用して自分の会社をどうしたいのか、を考えることが必要でしょう。
それと1人だけではシステムは成り立たない。IPの中に入っていくというのは、グローバルにつながるわけで、安全に気を配らなければならない。自らも、参加する場も安全というものを意識していかないといけない。
そのためにも、ベンダーをうまく使えと言いたいです。“業者”ではなく“パートナー”として。CIO、CSOの権限を強めて我々ベンダーをうまく使いこなしてほしいと思います。
「セキュリティ」 の新着情報
-
複数のデータセンターを分散させたままでBCP/DRを展開:山武
業務に必要なシステムをデータセンターで稼働させている企業は多いと思うが、災害復旧(DR)を中心とした事業継続計画(BCP)... - アップル、「iPhone」のSMS脆弱性を修正へ--IDG News Service報道
- シマンテック、アジア太平洋地域における中小企業のセキュリティ課題をレポート
- ATMのセキュリティに関する講演が中止に--米セキュリティカンファレンス
- スパムの83.2%がボットネットから--シマンテック調査
- セキュリティ 一覧へ »
「2006年IT業界展望」 のバックナンバー
-
新春トップ座談会(前編)--「日本版SOX法はセキュリティ意識変化のトリガーに」
もはやITは社会を支えるインフラである。2005年、そのインフラに大規模なトラブルが続発した。そこで、リスク管理のあるべき姿をベンダー3社のトップに聞いた。 -
2006年はプラットフォーム元年--インテル
-
2006年の目標は二桁成長を継続すること--シトリックス
-
オープンコンピューティングとSOAを加速する--日本IBM
-
64ビット デュアルコアの浸透でシェア拡大を目指す--日本AMD
- 2006年IT業界展望 一覧へ »
ZDNet Japan Essential Topic
-
ストレージ、イチから勉強しませんか?
ネットワークに仮想化、ストレージの流行も教えます -
業務効率化への第一歩はプロセス指向
まずは晩飯づくりからプロセスに分解してみよう!
企画特集
-
インターネット上の悪意を未然に防ぐには?
ブラウザに備わったセキュリティ機能を徹底解説 -
ストレージメディア特設サイト開設
仮想化環境において最適なソリューションを! -
SOA、BPM、SaaS −今、企業に必要なこと
ビジネス・アプリケーションの今を網羅する特設サイト -
中小企業のセキュリティリスクとは?
導入する側・される側 得するセキュリティ製品 -
◆エン・ジャパン厳選求人☆毎週更新◆
不況下でも急成長の秘訣とは?注目企業の取組みも公開! -
そのストレージで仮想化に対応できますか?
メリット盛りだくさんのサンのオープンストレージ製品 -
【徹底対談】運用管理ツールの賢い使い方
市場背景〜仮想化管理までアナリストが解説! -
今注目の「サジェスト検索」−デモ掲載中
システムのユーザビリティに革命を起こす技術とは -
セキュリティ&ユーザ事例【SIer Club】
最新のセキュリティ情報と提案事例が満載 -
仮想環境を実現するソリューション特集
仮想化導入時、こんなところ気にしてますか? -
ESBでIT投資の無駄を劇的に解消する
IBM IMPACT 2009を徹底レポート! -
マネジメントの「コラム」と「コネタ」
今日のキーパーソンは誰? -
ロリポップ!がリニューアル
【第1回】創業者の家入一真氏が語る誕生秘話!! -
パンデミック対策特集
2009年のパンデミック発生から再考する事業継続計画 -
集積度も性能も、業界最高水準のブレードPC
サーバの実装技術を、シン・クライアントへ応用 -
エンタープライズにおけるSUSEの強み
次世代データセンターの基盤は11だ。 -
サーバー監視・運用のコストを削減するには
エージェントレス方式を用いたパトロールクラリスで -
サービス・ドリヴン・データセンター
コスト効果の高いデータセンター構築には? -
■ストレージ容量50%削減保証■
ネットアップによる削減保証キャンペーン実施中
ZDNet Japanからのお知らせ
- ご回答にはCNET_IDご登録が必要です。
-
9. 出荷準備はOK?
この3分間のビデオは、あなたがソフトウェアを出荷する前に、データレー... -
10. Parallel Debugging Extensions
この3分間のビデオは、並列アプリケーション内のそうでなければ発見しが...
新着企業動向
-
中古車情報サイト「Mjnet.jp」で「VX.NS」のデータ連携を実現
ブロードリーフ -
無料SEO対策セミナー『SEO内製化支援セミナー』09年7月10日開催!
網羅株式会社 -
ラピッドサイト VPS 新プランリリース(月額7,350円〜)
GMOホスティング&セキュリティ -
SecureCube / Access Check
NRIセキュアテクノロジーズ - 企業動向一覧へ»
幸い今回は弱毒性で大事には至らなかったが、まだ油断はできない。企業活動を停止すると、大きな経済的損害や社会的信用の低下を招いてしまう。
サーバやOS、アプリケーションなどの世界ではオープンソーススタンダードが市場を牽引する現在、ストレージの世界でもオープン化の流れが始まっている。 
