非常に残念なことに、この金融不況のためにネット銀行であるINGダイレクトが日本での開業を撤回してしまった。NIKKEI NETの記事によれば既に社員が150人もいたということだから、開業までそう遠くはなかったに違いない。
救済されない個人投資家
以前取り上げたように、INGダイレクトはオランダ系ながら、北米市場において徹底したローコスト・オペレーションで成功したネット銀行である。消費偏重であった90年代の米国において、貯蓄を推奨するという逆張り戦略を徹底し、その存在意義をアピールして顧客を獲得した。
日本においては、団塊世代の退職ピークが訪れる中、多くの退職金がリスク性金融商品へと投入されたはずであるが、タイミングが悪かったとしか言いようがない。貯蓄から投資への掛け声のもとに多くの個人投資家が傷ついた中、INGダイレクトがどのような商品をどのようにアピールしてくるのか、期待していただけに非常に残念である。
求められるファイナンシャル・アドバイザー
米国のパーソナル・ファイナンス・サイトで最も人気を集めているmint。こうした金融ソーシャル・サイトでユニークな点は、多くの人々の家計情報から統計データを抽出出来ることである。TechCrunchでmintのCEOが、この不況下でユーザーの家計支出がどのように変化したかを紹介している。
2008年の家計支出全体を見ると、5月をピークにして下がり続け、12月のクリスマスシーズンをもってしても、年初の家計支出に届いていない。住宅関連、旅行、娯楽などの支出が年初比で20%以上も下落するなか、年初よりも増加しているのがファイナンシャル・アドバイザーへの支出であるという。金融危機の最中にあって、米国市民も助けを求めているのである。
しかし、日本において独立系のフィナンシャル・アドバイザーのマーケットは育ってはおらず、多くのアドバイザーは金融機関に所属している。それは、大きく価値の下落した投資信託を販売してきた人たちなだけに、改めて相談に行きたいという気にはなれない。
日本でもパーソナル・ファイナンシャル・マネジメントを
mintは、昨年の9月以降にユーザー数を4倍に増やし、現在は90万人であるという。いかに、米国の消費者が金融資産の管理にコミュニティの力を活用しているかが判る。ソーシャル・レンディング・サイトの存在感も同様である。日本でも多くの投資家が傷つくなか、ソーシャル・サイトによる金融サービスがもっと増えて行く素地はあるのではなかろうか。