Microsoftの関係者であるJeff Raikes氏は2007年の春に、VoIPが今後数年間でハードウェアベースからソフトウェアベースへと移行し、それによって企業向けVoIPのコストが大幅に低下すると予測した。このコラムでも2007年1月にVoIPに対するMicrosoftの取り組みについて取り上げたが、そのときの予想どおり、その後さまざまな変化が起こっている。Microsoftは新製品「Office Communications Server(OCS)」を引っさげて、VoIP市場へと大々的に参入しようとしている。
OCSの機能にはVoIP関連以外のものも含まれているが、VoIP機能はOCSの大きな部分を占めている。OCSは「Live Communications Server(LCS)」の後継製品であるものの、OCSではVoIP機能が大幅に強化されている。OCSに搭載されているソフトウェアベースのVoIP機能は、既存のPBXシステムと統合することも単独で使用することも可能である。今回はOCSを取り上げ、その機能や、VoIP導入を検討している企業にとってその機能がもつ意味を解説している。
2つの市場を対象にしたエディション構成
OCSでは、他のMicrosoftサーバ製品と同様に、2つの市場向けにエディションが用意される。中小企業はStandard Editionを選択することにより、VoIPを低コストで導入できる。このエディションはソフトウェア自体のコストが低いだけではなく、ユーザー情報を格納するデータベースを含むすべてのコンポーネントを1台のサーバ上で稼働させることができるため、ハードウェアのコストも低くなる。
より高度な能力を必要とする大企業はEnterprise Editionを選択することができる。このエディションでは、フロントエンドサーバを1台ないし複数台配置し、データベースサーバをバックエンドに配置したうえで、サーバ機能を複数のサーバ間で分散させることができる。また、可用性とパフォーマンスを向上させるために複数のフロントエンドサーバ間で負荷を分散させることも可能だ。
Enterprise Voiceコンポーネント
「Enterprise Voice」はOCSのVoIPコンポーネントであり、OCSの目標であるユニファイドコミュニケーションにおいて(音声やビデオ、会議、インスタントメッセージング、OutlookおよびExchangeとの統合とともに)重要なものとなっている。OCSにおけるVoIPは、Officeアプリケーションとの連携に欠かせない要素なのである。ユーザーはOutlookやCommunicatorの連絡先を「クリックするだけで電話をかける」ことができる。
またOCSでは、GoogleのGrandCentralのようにすべての電話番号を統合するサービスと同種の機能も提供されている。OCSでは、携帯電話を始めとするデバイスを複数登録できるため、電話がかかってきた際にそれらのデバイスすべてが同時に呼び出されるようにし、そのうちの1台を選んでその電話に出ることが可能である。Enterprise Voiceクライアントソフトウェアを使用することで、出ることができなかった電話については、別の電話番号へと転送するか、通知ログに記録を残せる。
さらに、音声通話機能はLAN内に限定されない。インターネットに接続しているユーザーは、遠隔地からオフィスに電話をかけることができる。VPN(仮想プライベートネットワーク)を使用する必要も、遠距離通話料金を支払う必要もないのだ。
コスト削減は、固定電話回線の代わりにVoIP回線を使用する場合以外でも期待できる。Enterprise Voiceは、通話に固定電話回線を使用する必要がある場合に、最低コスト判定アルゴリズムを使用してそういった通話のルーティングを決定するのだ。