コンシューマ市場で強いソフトバンクとアップルだが、成長著しい法人市場では他社の後塵を拝している。アップルはこの市場への足がかりを得るためにソフトバンクを選んだと考えれば――ZDNet Japan編集長 大野晋一が考える。
ソフトバンクモバイルとアップルジャパン、ともにコンシューマ市場へのリーチは十分だが、その一方で法人市場へのリーチはまだまだ伸ばしたい。iPhone 3Gを共通のツールとしてこの2者が法人市場に強力な足がかりを手に入れることができるとすればどうだろう?
本稿ではこうしたストーリーを考えてみたい。実現すれば非常におもしろいことになる。
法人市場で追い上げるソフトバンク
まずは現状のおさらいから。NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクという3キャリアの中では、法人市場に最も強いのはドコモだろう。法人向けの端末から回線・サービスまできっちりとそろえてきている。KDDIも端末・回線・サービスといった自社完結型のソリューションに加えて、最近ではレノボや東芝などとの協業により通信モジュール組み込み型のノートPCの提供が目立つ。
一方でソフトバンクはビジネス端末のラインナップと機能に強みがあるものの、ほかの2キャリアに比べれば後塵を拝しているといっていいだろう。特に大規模案件において持っておきたい固定回線や企業内回線との連携サービスはドコモとKDDIに分がある。
さて、一方のアップル。XServeという1Uのラックマウントサーバをリリースしたものの、主なねらいはすでに獲得しているMacのユーザーベースに対しての提案だ。新生銀行やあおぞら銀行がセキュリティ向上を狙って導入した例こそあるが、まだまだ少ないのが現状だ。
こうした状況で、ソフトバンクは次のブレイクスルーとして法人市場を見る必要がある。コンシューマー市場で純増を重ね、売上、営業利益ともに好調にのばしてきているが、この先のさらなる成長の実現には新しい武器が望まれる。ソフトバンクの好調の横でコンシューマの不調にあえぐ他の2キャリアを支えているのは法人分野だ。なにより、市場として法人市場全体が大きく伸びている。
ここにきてソフトバンクも法人を積極的に攻めている。元々ITの流通・卸しをやってきたソフトバンクのDNA、ソフトバンクテレコム(旧日本テレコム)の合流など、好材料には事欠かない同社。事業構造としても昨年秋より法人事業部を立ち上げ、販売チャネルも販売代理店網を急速に拡大した。郵便局への5万台納入の事例は記憶に新しい。Biz フェイスやSalesforce.comへの対応も開始した。
App Storeが新たな販路に?
さて、ソフトバンクが法人を攻める上での強みがいくつかある。シンプルな料金プランとオープン性を生かしたシンプルで素早いサービス統合だ。特にBiz フェイスは他社にありがちな「高度すぎるソリューション」ではなく、すぐに導入できてわかりやすいというメリットを持つ。
こうした強みを持つソフトバンクはアップルにとっても良いパートナーといえる。ソフトバンクと組むことでアップルはシンプルな商品ラインナップと価格設定、オープン性、わかりやすさを崩すことなく、コンシューマー市場だけでなく法人市場も攻めることができる。
極端な見方をすれば、コンシューマー市場は放っておいてもとれるアップルにとっては法人市場での組みやすさこそ重要――とすれば、ソフトバンクを選んだのは当然とも考えられる。
アップルとのパートナーシップの中ではApp Storeを活かしてSMBを攻め、自社の営業部隊と代理店網を使って中堅以上を攻める。この体制をうまく作ることができれば、ソフトバンクの法人市場No.1も早期に実現できるかもしれない。
おまけ:コンシューマーでiPhone 3Gは?
末筆のおまけになってしまうが、iPhone 3Gをコンシューマーサイドからも少しだけ見てみたい。
コンシューマーでは法人とは逆に、ソフトバンクとアップルの見ている方向性はすれ違っているように見える(もっともソフトバンクに限らず国内のキャリアがといってもいいだろう)。
ソフトバンクの注力点は大川淳氏も書いているとおり「女性を重視した商品群」。一方で、iPhone 3Gは国内の女性ユーザーに受けるのだろうか? デコレメールへの対応、孫社長がこだわったという絵文字、着デコなど、女性が求める機能への対応は「現在のところ不明。Webサイトに出ている情報がすべて」(アップルジャパン)だ。もちろんSDKを使ってソフトバンク側で対応することは可能だろうが、おそらくフルには対応しないと思われる。
国内の端末には無いインターフェースやデザインが魅力なのは万人が認めるところ。それはiPod touchで実証済みだ。しかし、携帯電話となるとどうだろうか?筆者は現在の国内市場においては、サービスと端末がきっちりと歩調を合わせている国内端末に分があるように思える。
筆者のアドレス帳に登録された10代後半〜20代後半の女性からランダムに5人選び、「iPhone買う?」と聞いてみた。「絵文字やデコレメールへの対応がなければ微妙……」との答えだった。一方、30台の女性は(サンプルが一人なものの)「買う」とのこと。話題になり(5人の女性全員がiPhoneを知っていた。さすがに今日3Gが発表されたことは知らなかったが)、ある程度売れるだろうが、「iPhoneと携帯電話は棲み分ける」というのが正解だろう。
関連情報
-
iPhone 3G--その全貌に映像で迫る [From CNET Japan]
予想通り、アップルのCEO(最高経営責任者)であるジョブズ氏は「Worldwide Developers Conference」のステージで、最新の「iPhone」を発表した。ここに、「iPhone 3G」が発表されたときのビデオを集めた。 - 「iPhone 3G」になっても音楽ダウンロードはWi-Fiで--製品ページで明らかに [From CNET Japan]
- iPhone向けサイトの構築に役立つ記事をピックアップ
- iPhone 3Gを考える:iPhoneが提案するデザインとは
- iPhone 3Gを考える:iPhone 3Gからはじまる悪夢
- AT&T、iPhoneデータプランを値上げ--月額30ドルに [From CNET Japan]
- iPhone 3Gを考える:WWDCの会場から黒船iPhoneが拓く世界を見る
- iPhone 3Gを考える:Exchange対応が物語るiPhone 3Gの方向性
- ソフトバンク株の行方--「iPhone」発売決定も不透明感ぬぐえず [From CNET Japan]
- アップル、「iPhone 3G」の仕様を公開
- Apple
- アップルジャパン
- ソフトバンク
- ソフトバンクモバイル
「製造」 の新着情報
-
クラウド時代のライセンス管理、セキュリティとコストに懸念--セーフネット
日本セーフネットは12月3日、ソフトウェアライセンスに関する調査結果を発表した。英国企業の68%は新しいテクノロジーの導入... - ISIDなど、製造業向け設計開発業務支援システム最新版を提供
- 日立、製造業全般の統合製造管理システムに体系化--倉庫管理システム追加
- コーセー、人事給与システムを刷新--2007年来のオープン化プロジェクト完遂
- サムスン、オープンモバイルプラットフォーム「Samsung bada」を公開へ
- 製造 一覧へ »
「ソフトバンクのiPhone獲得を考える」 のバックナンバー
-
ソフトバンクとiPhoneが日本の携帯を変える--ソフトバンクのiPhone獲得を考える
携帯事業者にとって異端児のiPhoneをソフトバンクは採算度外視で獲得したのか?「iPhoneが日本に上陸する日」の著者で、日ごろから海外の携帯電話市場をウォッチしている香港在住の携帯ジャーナリスト山根康宏氏が考える。 -
iPhone上陸をシャープとNECはどう見たか--ソフトバンクのiPhone獲得を考える
-
春のiMac発表はiPhone 3Gの夏発売に向けた布石だったのか?--ソフトバンクのiPhone獲得を考える
-
ソフトバンクはiPhoneをどう位置づけるか--ソフトバンクのiPhone獲得を考える
-
なぜソフトバンクだったのか?--ソフトバンクのiPhone獲得を考える
- ソフトバンクのiPhone獲得を考える 一覧へ »
企画特集
-
―エン・ジャパン厳選求人☆毎週更新―
ハンゲームの社長が語る・人材とサービスの在り方 -
大丈夫?あなたの会社のセキュリティ対策
中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティを考える -
マネジメントの「コラム」と「コネタ」
今日のキーパーソンは誰? -
企業ITシステムの企画、構築、運用のイロハ
戦略的なITシステムのために、今考えるべきポイント -
100万円で実現!中小企業の情報漏えい対策
中小企業の課題!?セキュリティ管理者不在でも大丈夫 -
『釣り★スタ』の誕生秘話に迫る
開発に携わった現場エンジニアが語る、その開発舞台裏 -
新型インフルエンザからビジネスを守る
危機管理担当者のためのパンデミック対策特集 -
急増するオンライン犯罪への解決策!
オンラインサービス保護ソリューション -
容量制限によるメール消去は一切無し!
全てを保存するメールセキュリティSaaSが登場 -
J-SOX法制定により内部統制の整備が急務に
重要性高まるActive Directoryの課題と対処法を公開中
-
3.Composer概要
Intel Parallel Studioの一部であり、並列プログラムを実装するために役... -
4. Inspector概要
Intel Parallel Studioの一部であり、順次および並列プログラムでメモリ...
新着企業動向
-
(株)理経、日本IBM社製 Webアプリケーション脆弱性診断ツール Rational AppScan販売開始
理経 -
多品種多メーカー取扱企業様向けシステムセミナー
日本システムテクノロジー -
「知って楽しむオトナのたしなみ」出張アテンダント編を公開しました!読者プレゼント企画も...
日立システムアンドサービス -
Dojo(道場)
テンダ - 企業動向一覧へ»
