NECでは、高信頼性が求められる基幹システムの構築においてLinuxはUNIX、Windowsに次ぐ“第三のOS”である。オープンシステムに続く、オープンソースのプラットフォームが着実に存在感を増している。
NGNで全社的に存在感を増すOSS
NECはこのところ、OSS分野で積極的な提携戦略を進めている。2006年9月にはLinux関連の特許管理会社であるOIN(Open Invention Network)に出資、続く10月にはOSSのサービス会社であるSpikeSourceと提携、さらに12月には組み込みLinuxのトップベンダーのMontaVista Softwareに出資した。こうした積極策の背景にあるのが、OSSが、NGN(次世代ネットワーク)を支えるのに必要な高度なソフトウェア技術に発展し、社会のさまざまな領域で活用されているためだ。
2004年9月、NECは「高信頼性が求められる企業の基幹システムをLinuxで実現する“エンタープライズLinuxソリューション for MC”の提供について」という発表を行っている。その中で「このたび、高信頼性が求められる企業、官公庁、自治体等の基幹システムの構築においてLinuxをUNIX、Windowsに続く第三のオープン系OSとして位置付け、プラットフォーム、SI、サポート/サービスの3つの軸から強化を図る」と宣言。ちなみに、エンタープライズLinuxソリューション for MCの最後のMCは、Mission Criticalの略である。
発表から2年半が経過して、その存在感はNECの中で増している。特に、OSS市場がOSからアプリケーション、SIという分野にまで拡大していることが、その勢いの裏にある。NECでOSSビジネスを推進する堀健一氏(コンピュータソフトウェア事業本部OSS推進センター長)は、市場の動きをこう見ている。
「この1、2年でOSSはOSからミドルウェア、そして業務アプリケーションにまで拡大しています。それを象徴する言葉としてわれわれは“エンタープライズ Linux”という言葉を使っています。この言葉で、OSだけでなく、ハードウェアプラットフォームやSIも含めたOSS市場の広がりを表現しているわけです」
同社は、そのエンタープライズ Linux市場は、現在年率20%の勢いで伸びていると推定している。堀氏も「ビジネスとしてもそう実感しています」と言う。そして、「NECでは、ハードウェアからソフトウェア、SIまで提供しているので、 Linuxとその周辺のオープンソースはビジネスの重要なネタであると考えています」と言葉を続けた。
LinuxサーバでNo.1の実績
この2004年9月の発表文にあるように、NECはWindowsやUNIXの世界で実績がある。
1980年代から日本のインテルサーバ市場をリードしたNECは、マイクロソフトに多くのエンジニアを派遣してOSを共同開発してきた。そのため、社内にはWindowsの技術者が多い。その一方で、HPのOEMベンダーとしてUNIXのカーネル技術者やミドルウェア開発者の人材も揃っている。Linuxに取り組む以前から、オープン系OS の開発経験は豊富だったわけだ。
しかし今は、着実にOSSの仕事が増えてきた。堀氏は、「おかげさまで、 Linuxはわれわれの業務の中でかなり大きな部分を占めるようになってきました」と話すが、「社内比較はともかく、国内市場においては、NECのOSS事業はトップクラスにあります」と同氏は自負している。