横山哲也の戦略
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ビジネスの最前線「ブランチ」のITはもっと真剣に考えられるべき
専任のIT管理者がいない「ブランチ」
近年、マイクロソフト製品は「ブランチオフィス」のサポート機能が強化されている。「ブランチ」を「支社」と翻訳している文書が多いが、イメージ的には「営業所」の方が近いだろう。営業所には専任の管理者はいないし、専用のマシンルームもない。しかし、ブランチオフィスは顧客と直接コミュニケーションを行うビジネスの最前線である。前線にこそ強力なITサポートが必要だ。
Windows Server 2003 R2以降はブランチオフィスをサポートする機能が数多く搭載されている。Windows Server 2008 R2とWindows 7で搭載されたBranchCacheもその一つだ。
BrancCacheの2つのメリット
BranchCacheには2つのメリットがある。高速なファイルアクセスの実現と、容易な管理である。一般にBranchCacheで最初に強調されるのは高速なファイルアクセスであるが、個人的には管理性の向上の方を評価したい。
ブランチオフィスには専任の管理者がいない。しかし、日々のビジネスをサポートするためにはサーバ、特にファイルサーバは必須である。しかし、本社で作成された資料をWAN回線越しに参照するのは効率が悪い。DFSを使って複製しておく方法もあるが、管理の手間が増える。そしてブランチオフィスにはシステム管理者がいない。
BranchCacheは、分散キャッシュモードはもちろん、ホスト型キャッシュモードであっても管理の手間はほとんどかからない。元のファイルが変更される度に新しくキャッシュを更新する必要はあるが、特別な手順が必要なわけではない。「Do it, and forget it」という言葉がある。「一度設定したら何もしなくても良い(忘れても良い)」という意味だが、BranchCacheがまさにそうである。
以前勤務していた会社で、地方営業所のネットワーク環境の貧弱さに驚いたことがある。文句を言わないのかと尋ねたら「言っても改善されないから」とのこと。IT部門の方は、ブランチオフィスのIT環境についてもっと真剣に考えるべきだ。要望がないのは満足しているからとは限らない。BranchCacheは万能ではないが、投資に対する効果という意味では非常に優れたソリューションだろう。
横山哲也(グローバルナレッジネットワーク株式会社 取締役技術担当)
1994年頃からWindowsに関するプロフェッショナル向けトレーニングを担当、Windows NT 3.1以降の全てのバージョンを経験した。最近はWindows Server 2008 R2とHyper-Vを主に担当している。
グローバルナレッジネットワークが運営するウェブサイト「G-Notes: Global Knowledge SNS」で、ブログ「千年Windows」を執筆中。主な著書に「Windows Server 2003完全技術解説」(日経BP)、「ひと目でわかるMicrosoft Windows Server 2003ネットワーク設定・管理術」(日経BPソフトプレス)、「実践Active Directory逆引きリファレンス」(毎日コミュニケーションズ)。
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