ガートナージャパンは3月14日、「日本のデジタル化に関する展望」と題する見解を発表した。2025年まで日本における「デジタル化」と呼ばれるものの7割以上が、従来のIT化/情報化とほとんど変わらない取り組みだと予想し、「何でもデジタル化と捉えられ、デジタル化の意味がかつてのIT化/情報化と混同されているケースも多くみられるなど混乱が生じている」と指摘している。
同社は、現在の日本で「デジタル化」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の言葉が氾濫しているとする。テクノロジーに直接関与しないビジネス層もこれらに取り組むことが強く求められているとし、「デジタル化」がバズワードになった結果、「何でもデジタル化」と捉えられるようになっていると分析する。
アナリスト バイスプレジデントの鈴木雅喜氏は、日本では「デジタル化」の意味が拡張、希薄化しており、日本企業はIT化/情報化への方向性と、ビジネス変革の方向性を明確に区別して取り組む必要があると警鐘を鳴らす。経営層がデジタル対応の強化を戦略としても、実際には取り組みやすい従来のIT化や情報化の領域にとどまり、本質的なビジネス変革を目指す動きが停滞することが考えられるという。テクノロジーに関与するリーダーは、この状況を理解して、「デジタル化の取り組みの意味するところをビジネス部門や経営層に正しく説明しながら、テクノロジーを活用した自社のビジネス変革を推進すべき」とアドバイスする。
ただ、改善の兆しも見られるといい、同社がIT部門の管理者層向けに実施した調査からは、ここ数年でIT部門(あるいはDX部門)とビジネス部門の連携や協業が進みつつあることが分かった。IT部門とビジネス部門の信頼関係について、2020年までは「薄い/ない」の回答割合が「密に協業できる」を上回ったが、2021年の調査結果では逆転し、約35%が良好な連携を築いているとした。
日本のIT部門とビジネス部門の協業体制(出典:Gartner、2022年3月)
鈴木氏は、IT部門がビジネス上の成果を獲得する上でビジネス部門との連携や協業が越えなければならないハードルの1つとし、「今後も部門間連携の改善トレンドが継続すれば、2026年までに半数を超える日本の大企業のIT部門とビジネス部門が良好な連携を実現するだろう」と見る。「デジタル化への追い風が強く吹いている今、組織の規模や業種、従来のビジネスモデルなどに関係なく、全ての企業のIT部門は、未来に向けた一歩を踏み出し、また取り組みを加速していくべき」とコメントしている。