Andy Itzinger氏はかつて、ロンドンで30席のパブを経営して暮らしていた。10人のチームの運営から、建物の所有に伴う金銭的なコストの管理、親しみやすい接客、お気に入りのビールの提案まで、Itzinger氏は自分が正しいキャリアを選択したと確信していた。
しかし、ロンドンのパブで喫煙が禁止になり、客が減り始めると、IT開発者としてテクノロジー分野のキャリアに復帰することを決めた。このような形でテクノロジー業界に入るのは珍しいことだが、Itzinger氏は現在、Vertivでプロダクトマネージャーとして働いている。
驚いたことに、バー経営とIT業界のプロダクトマネージャーのスキルセットには、重なり合う部分が多いという。
「運営の観点から見ると、私は経営者として、需要動向を予測し、パブに適切な量の食べ物と飲み物を備えておく必要があった。また、すべてのものが使える状態で、消費できるようにしておかなければならなかった」と同氏は語る。これは、テクノロジーの需要予測とそれほど変わらない。
「どちらの役割にも必要なスキルは、良質なコンサルティングサービスの提供、市場の知識、業界での経験、高品質の製品だ」
Itzinger氏は、急速な成長と雇用機会の創出を続けるテクノロジー業界に参入した多くの労働者の1人にすぎない。
PwC Globalの2021年の調査によると、77%の労働者は、新しいスキルの習得や、別分野での一からの再トレーニングに前向きだという。そして、テクノロジー業界は間違いなく労働者を必要としている分野だ。The Computing Technology Industry Associationは、2022年の新規の技術労働者が17万7705人に達し、業界全体で2%以上成長すると予測している。
Olivia Hall氏は、The Software Instituteでソフトウェア開発者になる前は、フリーランスの映画レビューライターだった。Hall氏の学位はジャーナリズムだが、突き詰めていくと同分野での機会と情熱が不足していたため、パンデミックが起きてから、過去にウェブサイトの開発を楽しいと感じていたことを思い出すと、転職活動を開始した。
「大学でジャーナリズムを学んでいたとき、デジタルプラットフォームモジュールを使った。その一環として、『WordPress』で独自のウェブサイトを制作し、その過程で基本的なコーディングスキルもいくつか習得した」とHall氏は語る。「基本的なHTMLとCSSを使った。当時、これは本当に楽しいと思った」
同氏はコーディングを楽しんだことを思い出し、さまざまなコーディングブートキャンプを調べるようになり、最終的に予算内で受講できるものを見つけた。しかし、何より重要なのは、同氏がコーディングを楽しんで、自分の職業にできると考えたことだ。
「最初にコードの書き方を学んだとき、ごく単純なコードを記述すると、その結果が瞬時に画面に表示されることに、すぐにある種の満足感を覚えた。それは本当に素晴らしい感覚だ」とHall氏。「単純なことだが、とても楽しい」
学びたいという思いこそが、キャリアの途中で業界を変える場合に最も重要なものだ。
「テクノロジー業界のどこで働きたいかを考えなければならない。そのため、サイバーセキュリティ、リモート管理、エンジニアなど、自分がやりたいことに関して、多少の情熱を持っている必要があると思う」。Itzinger氏はこのように述べた。「次に、自分のスキルセットを、その仕事で求められるものと実際に一致させる。そのためには、さらに努力を重ねるか、学校に戻るか、オンラインで資格を取得することが必要になるかもしれない」
コーディングの学習がすべてではない。テクノロジー業界で非常に重要なソフトスキル(複数の業界で役立つスキル)には、カスタマーサービス、販売、マーケティング、コミュニケーションなどがある。
Hall氏は、自分のように業界を変える場合、特にテクノロジーのような絶え間なく変化する業界では、すべてを知る人など誰もいないということを覚えておくことが重要だ、と述べた。
「すべてを知るのは不可能だ。知っておくべきだと感じる情報の量に圧倒されることもあるかもしれない」とHall氏。「しかし、私は(この業界に)入ったとき、他の人とうまくコミュニケーションをとることができれば、非常に大きな後押しを得られるということに気づいた。なぜなら、必要なときに助けを求めて、タスクや自分に求められていることを理解できるからだ」
テクノロジーが私たちの日常生活に結びついていく中で、テクノロジー業界に入るために必要なスキルは、さらに一般的なものになりつつある。
「これは極めて巨大な業界だ。人々にこれらのスキルのトレーニングを実施する必要がある」(Hall氏)
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。