SAP HANAの最初の顧客がNRIだった理由--SAPの新パートナー戦略

大川 淳

2011-10-03 09:00

 SAPジャパンは、日本国内のパートナー向け施策を改革し、海外進出志向の強いパートナーの支援体制を強化する。この新戦略では何を目指すのか。独SAPでライン・オブ・ビジネス・ソリューション担当ジェネラルマネージャーを務めるPeter Maier氏に聞いた。

産地直送の情報をそのまま知らせる、翻訳最優先からの脱却

 従来、ドイツのSAP本社が新たな製品やサービスを発表すると、SAPジャパンはその情報や資料を日本語に翻訳し、日本国内のパートナーにダイジェストのような形で知らせていた。Maier氏は「グローバルに発表しても、日本市場では(翻訳に時間がかかり)内容が3〜6カ月も遅れて伝わることさえあった。これでは、顧客からみれば、SAPの真の価値を得られていないに等しい」と指摘、「今後はグローバルで投入する製品についての情報を、欧米と同時に日本の顧客にも(翻訳する以前に)そのまま紹介していきたい。いわば、産地直送の情報を届ける」意向を示した。

 この新たなパートナー戦略は「Globalization Program」と名付けられ、「ローカライゼーションだけではなく、グローバリゼーションにもより注力する施策を他社に先駆けて実施していく」方針だ。

Peter Maier氏
Peter Maier氏

 「SAPジャパンだけではなく、国内のパートナーにも協力を仰ぎながら進める。最近では、日本語に依存しない環境下でも、SAPの最新情報を得て製品を活用できる体制が特に求められている。海外での展開を望む日本企業が増えているからだ。そこで、ドイツのSAP本社も強力に後押しして、海外へ打って出る日本企業を支援できる仕組みを作っていく」

 ドイツのSAP本社敷地内には、パートナーのための常駐オフィスがあり、世界各国からやってくる170社が利用している。しかし、「日本のパートナーは2社が来ているが、うまく使いこなしているとは言いがたい。ここに来ても、ある社では海外法人の単なる出先機関になっていたり、あるいは日本本社とのコミュニケーションがとれていなかったりする。日本人スタッフしかいないケースもある」のが実態だ。同社では、パートナーからの希望があれば、この常駐オフィスを有効活用できるように援助していく考えだ。

 SAPジャパンは、新施策の第一弾として、国内の主要パートナーのうち十数社をドイツに1週間招き、新戦略について説明した。その後、「SAPジャパンの翻訳機能は、最新情報についての資料が読みやすくなるという意味では重要だが、グローバルで同時にそのままの情報を得られる体制も望ましい、との反応がパートナー各社から返ってきた」という。

 「日本の顧客から聞いたのだが、SAPは製品のロードマップを示しているはずだが、パートナーには十分に伝わっていなかった部分があった」のが現状だった。

 Maier氏は「SAPの製品やサービスについての最新情報の入手が遅れれば遅れるほど、パートナー各社は顧客のサポートがやりにくくなる。その結果、パートナーも顧客も競争力が十分につかなくなり、負のスパイラルに陥ってしまう。ローカライズに最重点を置く姿勢をグローバル化重視に転換するというのは、海外企業の日本法人としては逆転の発想ともいえるが、重要施策のひとつとして位置づけていきたい」と話す。

 情報の即時伝達をはじめとする迅速な対応の重要性を物語る例として、Maier氏は次のような話を明かした。

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