SAPジャパンは8月30日、新社長となった安斎富太郎氏の就任会見を開催した。安斎氏は2011年1月1日付けで同社に入社、専務執行役員 シニアバイスプレジデント 営業統括本部長に就任し、ビジネスアナリティクス&テクノロジー事業、チャネル事業活動を含む、全営業活動を統括してきた。8月15日付けで代表取締役社長に就任し、同社のビジネス全体を統括している。
安斎氏はSAP入社前、デルで4年間にわたり執行役員 営業統括本部長としておもに大企業顧客向け営業部門を統括、それ以前は日本IBMにおいてIBMコーポレーション米国本社への3年間の赴任を含む25年間、公共・公益・通信メディアを中心とする分野での営業および事業開発部門の管理職を歴任していた。
安斎氏はまず、2011年上半期の業績について説明、前年同期比で24%の伸びを示しており「非常に堅調」であるとした。その理由について「お客様のニーズとSAPのイノベーション戦略が一致」したことと「パートナーとの協業の成功」を挙げた。リーマンショック以降、日本の企業は攻めの展開により情報分析への投資が加速した。それが東日本大震災で投資の見直しを迫られたが、投資案件の順位付けによりSAPの提案が合致し、結果、震災の影響を受けずに済んだという。
パートナーとの協業においても、前年比1.5倍のSAPの伸びはパートナーの協力によるもので、お客様によりよい形でソリューションを届けられたという。顧客への満足度調査においても前回調査から8ポイント上昇しており「お客様とのWin-Winの関係ができた」とした。
これからの抱負について、安斎氏は「お客様の成功に貢献」「One SAPの強化」「社員のスキル向上」の3点を挙げた。最も大事なことは顧客の成功であり、顧客から期待される会社、人材を目指したいとした。また「One SAP」は、SAPジャパンだけでなくアジアやグローバルのSAPの力を統合し、顧客に届ける「ひとつの会社」であることを強調した。
社員のスキルについて、安斎氏はSAPジャパンに入社してよかったと思うことが3つあるという。「毎日お客様の生の声を聞ける」こと、ERPの会社として「創業時の精神が現在も生きている」こと、そして最も大きかったのが「社員のやる気、チャレンジ精神、新しいものをどん欲に取り込もうとする質の高さ」だったという。今後は約1200名の社員ひとりひとりに「意志決定できるスキル」を持たせたいと述べた。
安斎氏はSAPジャパンの強みを「スピードとフレキシビリティ」であるとし、特に震災後、スピードだけでなくフレキシビリティも追加された顧客のニーズに応えられるとした。たとえば、HANAのインメモリコンピューティングはレジの全取引をリアルタイムにロードし、毎日3時間かかっていたバッチ処理を不要にした。これにより二重投資が不要になり、ハードウェアコストを1/10まで下げたという。
企業は成長しなければ研究開発を行えないことから、下半期は最低でも2桁の成長を目指すとしている。また、どんなデバイスやOSでも同じデータを見ること、さらにはクラウドといった要望にも応えていきたい考えだ。このほか、日本企業として社会貢献もグローバルと連携しながら行っていくとした。