独SAPでグローバルセールス担当プレジデントを務めるRobert Enslin氏は、2007年までの2年間、SAPジャパンの社長兼CEOを務めた人物だ。米オーランドで5月に開催された「SAPPHIRE Now 2011」で、Enslin氏にSAPの新事業、営業体制などについて話を聞いた。
Enslin氏は東日本大震災に心を痛めながらも、「変革のチャンス」と遠くからエールを送っている。
日本は知の経済への移行を進めよ
日本企業や日本経済に精通したEnslin氏は、東日本大震災に心を痛めながらも、「災害は日本企業が一部をオフショアに移す動機になるかもしれない」「もっとグローバルに展開する企業になるチャンス」と言う。
「日本企業は国内で多くを製造するが、効率性、人口問題などを考慮すると、中国やインドなど自社にとって適切な場所に移す必要もあるのではないか。一部のプロセスをオフショアに移して知的資産は国内に残す、知の経済への移行を進めるべきだと思う」と述べ、オフショアにより、最大の資産である人をもっと有効活用することができると強調する。
「戦後間もない頃、50年後の日本の姿を想像できた人はいなかったはずだ。日本はすばらしい力を持っており、日本には素晴らしい企業がたくさんある。グローバルな視点を持って、グローバルにオペレーションする企業になれば、さらなる成長のチャンスがある」
真っ先にHANAに関心を寄せたのは日本企業
Enslin氏は2005年から2007年に渡りSAPジャパンを率いた経験がある。就任当初、4億600万ユーロだったSAPジャパンの売上高を、初年度で2500万ユーロ上積みし、2007年には就任当時と比べ約10%増の4億4700万ユーロに成長させた。SAPジャパンのCEOを務める前には、SAP Americaで最大規模の地域担当責任者を務め、そこでも売上を35%伸ばしたという凄腕の持ち主だ。
2010年よりSAPは「オンデマンド、オンプレミス、オンデバイス」というスローガンの下、既存のソフトウェアライセンスモデルから、モバイル、それにSaaSに代表されるサービスの拡大を図っている。昨年はインメモリ技術の製品化を進めるなど、新SAPに向けた素地も整えた。
Enslin氏が最初に強調したのは、「BusinessObjects」を含むビジネス分析分野だ。「ビジネス分析は数年前から大きな事業に成長している」とEnslin氏、地区や業種を問わずBIのメリットが認知されているという。
Enslin氏は、ビジネス分析とインメモリとの組み合わせにより“リアル”リアルタイムが実現すると述べ、「大きなデータを抱える日本企業向けのソリューションだ」と続ける。
実際、SAPは2010年末に「SAP High-Performance Analytic Appliance」(HANA)を発表したが、「真っ先に関心を持ったのは日本企業だった」(Enslin氏)という。SAPPHIRE Now会期中、事例として紹介された野村総合研究所(NRI)は、世界に先駆けてHANA導入を決めた最初の顧客なのだ。