Sybaseを買収してエンタープライズモバイル分野を強化したSAPが、国内でも攻勢をかける。
SAPジャパンは成長戦略の柱に「モビリティ(モバイル)」を掲げているが、9月27日には2011年第4四半期(10〜12月)に27種類の日本語版モバイルアプリケーションを提供すると発表。合わせて、同日より3種類のモバイルアプリケーション導入支援サービスを提供することも発表した。
上野豊氏
同社バイスプレジデント ソリューション営業統括本部 本部長の上野豊氏によれば、モバイル分野では「現在のレベニューに見合わないくらいの投資をしている」という。この領域では、2011年第3四半期(7〜9月)で20社の顧客を獲得(パートナーを含む)。第4四半期(10〜12月)を含む通年の見通しでは30社超の顧客獲得を見込んでいる。第4四半期の顧客は、ユーザー企業が中心になるようだ。
「獲得した顧客数では、SAP HANAよりもモビリティの方が上だ」と上野氏は豪語する。
現在提供中の2つの日本語版モバイルアプリケーションを合わせると、第4四半期には29種類のアプリケーションを提供することになる。SAPジャパンでは、モバイルアプリケーションを生産性向上のための「ライト」、業務部門および各業種向けの「エンタープライズ」、そして「コンシューマー」の3種類に分類。今回発表された27種類のうち、21種がライト、5種がエンタープライズ、1種がコンシューマー向けのものになる(ただし、コンシューマー向けは、いわゆる「一般消費者向け」ではなく、住民サービスや患者介護などのBtoBtoC色の強いものになる)。
今回の提供では生産性向上のためのライトアプリケーションが主で、対応デバイスはBlackBerryとiPhoneが中心となる。
SAPジャパンでは、モバイルアプリケーションの開発と提供をパートナーとも協調して進めたい考えだ。通信キャリアではNTTドコモとソフトバンクモバイルとともに、最新のモバイルデバイスへの対応と、デバイス上のモバイルソリューションの開発を協同で推進する。SAPパートナーとは、協同でシステム開発を手がけるといったトータルソリューションの提供を目指すとともに、業種別アプリケーションも開発および提供したい考えだ。
ビジョン策定から実業務への適用までを支援
合わせて発表されたモバイルアプリケーション導入支援サービスは、「Value Prototyping」「Custom Development Project(CDP)」「Starter Pak」の3種を用意した。
Value Prototypingでは、顧客のIT部門に加えてユーザー部門も参加し、どのようにモバイルを活用していくのか議論するワークショップを実施。そこで共有したビジョンをもとに、プロトタイプのシステムを開発し、導入後のイメージを体験するサービスとなっている。ワークショップのみの場合は3日間からの提供、プロトタイプの作成も合わせると2週間からの提供となる。
CDPは、業種業態や顧客特有の業務プロセスに合わせて、モバイルアプリケーションを設計開発するサービス。Starter Pakは自社で開発を手がけたい企業向けのサービスで、モバイルアプリケーション開発基盤の「Sybase Unwired Platform(SUP)」を使ったモバイルアプリケーション開発や、SAP製アプリケーションとの接続といったトレーニングを提供する。
林幹人氏
同社ソリューション営業統括本部 プラットフォームテクノロジー営業本部 本部長の林幹人氏は「どのようにしてモバイルでビジネスを進めるか、あるいは今のビジネスをどのようにモバイル化するか」といったユーザー企業の悩みを、構想の策定から実業務への適用にわたって解決できるサービスだとしている。
また、上野氏は「SAPには2000を超えるERPユーザーと、1000を超えるBusinessObjectsユーザーがいる。(SUPやモバイルデバイス管理のAfariaを)単なるミドルウェアとしてではなく、活用を超えたソリューションとして提案していきたい」と述べている。