新潮流Device as a Serviceの世界

Windows 10のサポート終了とWindows 11 24H2の問題をおさらいする

松尾太輔 (横河レンタ・リース)

2025-01-17 06:00

 2025年もよろしくお願いいたします。少々遅いごあいさつになってしまい、申し訳ありません。さて、2025年は、「Windows」のデバイスにとってビッグイベントがあります。そうです、10月14日に「Windows 10」のサポートが終了します。多くのユーザーが「Windows 11」への移行を余儀なくされます。

Windowsのバージョンアップを振り返る

 思えばWindows 10がリリースされた時、言い方は悪いですが、私はMicrosoftの片棒を担ぎ、「Windows 10は最後のメジャーバージョンアップだ」「これからは、『Windows as a Service』としてWindows 10が進化し続けるのだ」と盛んに言っていました。そうしたらなんと、Windows 11をリリースするとMicrosoftは言うじゃありませんか。その時ははしごを外された気分でした。それはさておき、Windows 10のサポートは終わります。

 とはいえIT管理者は、Windows 10への移行時と同じように、Windows 11への移行に不安を抱いているのでしょうか。私は、そうと言えないと思います。

 Windows 11は既にリリースから3年が過ぎます。Windows as a Serviceとして、Microsoftの戦略である月1回の「Quality Update」(QU)と年1回(Windows 10リリース当初年2回、その後に変更)の「Feature Update」(FU)という新しいアップデートの運用形式が浸透しつつあります。特に、今までOSの入れ替えをネットワーク経由で行うというのは、Windows 10への移行当時にあまり経験がない領域であり、企業のIT管理者からすれば、「そんな危ない橋は渡れない」というものでした。

 しかし、Windows as a ServiceのFUは、それを1~2年に1回の頻度で行います。最初に恐れを抱いていたIT管理者は、さまざまなツールの支援もあり、今ではもう慣れてしまっています。Windows 11はWindows 10の延長線上にあり、ほぼFUという位置付けです。アプリケーションについても、Windows 7からWindows 10への移行については、さほど心配はないということは当初から言われていました。

 Windows 11は見た目が大きく変わったため、そこに目を奪われがちですが、Windows 11リリース当初のカーネル(OSのコア部分)のバージョンはWindows 10と同じものでした。Windows 11への移行に際して、PCを入れ替えるのであれば、普段のPCのリプレースと変わらず、ネットワーク経由でアップデートするならばFUと変わらないわけです。

 ただ、Windows 11の移行に何も障壁がないわけではありません。大きな壁は2つあります。

  1. PCの買い替えが必須になるケースがある
  2. 最新バージョンの24H2は、新しいカーネル(OSのコア)であり、今は不具合が多い

 1つ目は、PCでの「TPM 2.0」搭載が必須となっていることです。TPM(Trusted Platform Module)とは、セキュリティ機能を提供するハードウェアチップです。主に暗号化、デジタル署名、認証、データ保護などの機能をサポートします。このチップがPCに搭載されていないと、Windows 11はサポートされません。

 実はWindowsの歴史において、Windows 11のTPM 2.0のように特定のハードウェア要件が必須とされた例は、他のバージョンではあまり見られません。過去のバージョンでは、例えば、「Windows 8」で「UEFI」(Unified Extensible Firmware Interface)とセキュアブートのサポートが推奨されましたが、必須ではありませんでした。Windows 10でもTPM 2.0のサポートが推奨されていましたが、必須ではありませんでした。そういう意味では、Windowsの歴史上、最も大きな必須要件の変更があるバージョンがWindows 11というわけです。

 そのため、パフォーマンスを犠牲にして古いPCでWindows 11を使うということが許されないケースが出てきます。その時は必ずハードウェアの買い替え(リプレース)が必要になってしまうのです。MicrosoftがWindows as a Serviceという理念を捨ててまでWindows 11という新しいバージョンを出した理由がここにあるような気がします。先駆者としてMicrosoftが誇りとともに自身に課していた下位互換という足かせを外し、今後はハードウェア要件の変更、過去のハードウェアを切り捨てる(パフォーマンス以外で)ということを示したのだと思います。

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