米国のジャーナリストであるThomas L. Friedmanが「フラット化する世界」の初版を出版したのは2005年4月である。その中でFriedmanは、グローバリゼーションの進展を3つの段階に定義した。”Globalization 1.0”は国家が主役の時代。1492年のアメリカ大陸発見に始まり、1800年の産業革命で終わる。続く”Globalization 2.0”の主役は多国籍企業であるが、それは2000年に終焉を迎える。そして、フリードマンは2000年から始まる”Globalization 3.0”の主役は個人であると宣言した。
フリードマンの予測は、2005年10月に登場したWeb2.0の概念によりリアリティを帯び始め、2006年、我々は”Globalization 3.0”が現実のものとなるのを目撃した。というよりは、我々自身がその渦中へ巻き込まれていったといった方が正しいだろう。
2月に梅田望夫さんの「Web進化論」が出版され、Web2.0は誰もが知るキーワードとなっていく。「フラット化する世界」の日本語版が出版されたのは5月。Mixiは9月にマザーズに上場し、Googleは10月にYouTubeの買収を発表した。日本でのサービス開始も秒読み段階に入った仮想世界のフラットワールド「SecondLife」の住人が200万人を突破したのが12月。
そして、2006年、Time誌が選んだ「Person of the Year」は「You」。”Globalization 3.0”は達成され、世界はフラットになった。
一方、エンタープライズソフトウェアの領域はどうか。大手ITベンダーはソフトウェアビジネスの集約を継続し、ソフトウェアプラットフォームのフラット化が進行した。例えば、IBMは、コンテンツ管理ソフトのFileNetやセキュリティソフトのISSなど、2006年も10億ドルを超える買収案件を複数手掛けた。
Oracleは2006年1月にSiebelの買収を完了すると、通信業界向けソフトのPortal Software、コンテンツ管理のStellentなどのソフトウェア企業を買収する一方、オープンソースデータベースのSleepycatを買収したり、同じくオープンソースデータベースのMySQLに関心を示すなど、オープンソース領域へ攻勢に出た。
こうした寡占化の流れが続けば、ソフトウェアのビジネスはプロプリエタリーもオープンソースも、いずれ限られた企業が提供する統一化されたプラットフォームに集約されていくだろう。
コンシューマーの領域においても、エンタープライズの領域においても、プラットフォームが統一化されていくことにより、これまでバラバラであったものがコミュニケーション可能となり、これまでに生み出せなかったものが生み出せるようになる。
Web2.0風に言えば、それはコラボレーションによる価値の創造ということになる。アプリケーションもミドルウェア層を共有することにより、より一層の効率化が可能となる。
しかしながら、プラットフォーム統一化の先には、均質化の進展と多様性の喪失が予見され、当初活発であったイノベーションが枯渇する危険を孕む。例えば、企業が中心的な役割を果たしたGlobalization 2.0の時代においては、グローバル企業が世界中で同一の商品やサービスを提供することが可能となった。
これは、世界中どこに言ってもマクドナルドが食べられ、スターバックスコーヒーが飲める安心に繋がる。どう頼んでいいのか判らないマドリッドのローカルなタパスバーで戸惑う必要はないのだ。
しかしながら、それが進むと、均質なサービスの安心感とは裏腹にローカルなタパスバーがスターバックスコーヒーに駆逐され、徐々に地域性の喪失へとつながっていく。その先には均質な世界が広がり、イノベーションの源となる多様性が失われてしまう。
エンタープライズソフトウェアの領域における懸念も同様のものだ。IT企業が集約化のプロセスを進行させていくことにより、ITが徐々にスケールのビジネスへと変貌し、イノベーションの力が失われていく可能性がある。
そうした中、2007年に課されたITビジネスの課題は、寡占化による多様性の減衰をどのようにして補っていくかにあるだろう。ITビジネスの成熟プロセスにおいて、買収そのものを否定するものではないが、寡占化の過程とイノベーションをいかに両立させるかがITビジネスを活性化させるための鍵となる。
では、2007年、イノベーションの震源地はどこに求めれば良いのだろう?
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