ITが進化する方向に議論の余地などない

宮本認 (ガートナー ジャパン)

2011-05-12 17:55

エンタープライズIT「アーキテクチャ」の真髄(前編)

 コンサルタントの重要な能力の一つに、お客様との心理的な距離を縮める能力がある。お客様との距離感が近ければ、本音を聞きやすく、本質的な議論もしやすい。当然、顧客満足にも繋がりやすい。

 多くの場合、時事問題の雑談がこれに該当するが、優秀といわれるコンサルタントは、時事問題以外にも、自分の性格や外見に応じて、この距離感を縮めるテクニックを1つや2つは持っている。

 筆者にも当然、鉄板のテクニックがいくつかある。その中の1つは、「コーヒーの依頼の仕方」である。応接室に通されたときは、その企業の総務部門が管轄する機能会社に飲み物を依頼することが一般的で、いくつかのメニューから選べることが多い。そういうときに、軽く次のようなやり取りをする。

 「お飲み物は何にしますか?」と聞かれる。「“おいしい”コーヒーをください」と答える。なぜだかわからないが多くの場合、「いやぁ、おいしいかどうかは、わかりませんが…」と答えて頂き、今まで百発百中でお客様の笑いが取れている。

 多くの場合、コーヒーは結構おいしい。

部長の先制攻撃、沈黙するコンサルタント

「やぁ、宮本くん。悪いね、またきてもらって。たまには、飲み物でも出すよ。何がいい? えーと、コーヒーと紅茶とオレンジジュースもあるし、変わったところだとストロベリーヨーグルトドリンクもあるよ」

「じゃ、おいしいコーヒーで」

「えっ、おいしいコーヒー? それはどうかなぁ…まぁ、普通かなぁ。あ、もしもし、205会議室ですが、“おいしい”コーヒー2つお願いします。名前は情報システム部のAです。社員番号は、○○○○です」

「部長、このネタ、鉄板なんですよ。なぜか、ほとんどのお客様が、『いやぁ、ウチのは、そんなにおいしくないですよ』って答えるんですよ。そんなこともないんですけどね」

「ウチのは、でも真剣においしくないかもなぁ…なんせ、安い豆使っているからね」

「またぁ、ご謙遜を。ところで部長、今日は第3回目です」

前回までの話、もう忘れちゃったなぁ…」

「なーんと失礼な! じゃ、また2回目やりますか!?」

「うそうそ。今のままだと、事業の成長戦略に、IT的に、投資配分的に、人材的にも追い着けないって話ね」

「そうです。で今日は、ITをどうするか? について議論したいと思います」

「でも、どうせ、インフラは仮想化して、アプリケーションはSOA(サービス指向アーキテクチャ)化して、ERP(統合基幹業務システム)はライトサイズして、CRM(顧客情報管理システム)とかPLM(製品ライフサイクル管理システム)とかを強化して、SNSやコラボレーションなどの新しいコミュニケーションプラットフォーム入れていって、って話なんでしょ?」

「(ドキッ)ま、そうです」

「宮本君も前回そう言っていたけど、インフラは確かにアプリケーションごとに作るなんて時代じゃなくなったよね。なるべく標準化して共有化していく方がいい。SOA化だって、BPM(ビジネスプロセス管理システム)やESB(エンタープライズサービスバス)とか、そういう考え方はやっぱりあるべき姿だと思うし、そのうち、そうなっていくんだろうと思う。そうした上にアドオンをあまりしていないERPをベースに、ビジネスごとに変わるところは外付けで作りやすい基盤の上で、いくつかのモジュールをパターンとして持っておけば、グローバル展開をするときに、チョチョイのチョイで新しく展開できていくだろう」

「………」

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