Susan Whitneyが、IBMのIntelチップ搭載サーバ事業を率いるようになって5年--この間に、同社はいくつもの大きな変化を経験した。しかし、決して変わらなかったものもある。それは大規模なx86サーバに対するIBMのこだわりだ。
Intelの「Xeon」チップは、Advanced Micro Devices(AMD)が投入した「Opteron」の猛追を受けながらも、サーバ向けx86プロセッサ市場で首位を堅持している。現在、Xeonは主にデュアルプロセッサ仕様の小型サーバに採用されているが、IBMは企業の基幹オペレーションを支える大規模なマルチプロセッサシステムにもXeonは適していると考えている。IBMは最大で32基のデュアルコアXeonプロセッサを搭載したサーバを販売しているが、x86サーバ市場でIBMの上位にいる2つの企業--市場首位のHewlett-Packard(HP)と2位のDellは、IBMとはまったく異なるアプローチを採用している。両社は8プロセッサ搭載サーバの販売を打ち切った。両社が現在取り扱っているサーバは、最大でも4基のプロセッサしか搭載していない。
Dellは、サーバ市場のハイエンドはより小型のサーバで構成されるクラスタに移行すると考えている。一方、HPの考えは、大規模なタスクには、IntelのItaniumチップを搭載したサーバがふさわしいというものだ。ItaniumチップはXeonよりも安定性が高く、データの転送速度も速い。
IBMに近い考え方を持つ唯一の企業はSun Microsystemsだ。Sunがx86チップへの対応を決めたのは比較的最近のことだ。ただし、同社が8基を超えるプロセッサをx86サーバに搭載する見込みはない。また、Sunは、IBMとは異なり、Opteronチップを採用している。IBMの販売するハイエンドのx86サーバには、Xeonのみに対応するx3チップセットが搭載されている。
WhitneyはCNET News.comのStephen Shanklandのインタビューに応じ、大型サーバに関する戦略や、IBMがAMDに対して冷淡な理由やその他の事柄について語った。
--昨年は「xSeries」のサーバが登場しました。2005年はどんな年でしたか。また、2006年には何が待ち受けているのでしょうか。
2005年は、何といってもブレードサーバ事業の成長が印象的でした。第3四半期も、われわれはこの市場で首位を維持することができました。xSeriesは電力効率の点でも、冷却効率の点でも、非常に優れた製品です。消費電力と冷却は相変わらず大きな問題となっており、企業とのミーティングで、この2点が話題に上らないことはありません。
エコシステムが順調に構築されつつあることも嬉しいニュースです。現在は350社のパートナーが、BladeCenter向けの製品を開発しています。ブレードサーバの設計仕様を公開した後は、新たに300社がこの仕様をダウンロードし、BladeCenter向け製品の開発に取り組むようになりました。
また、われわれの「x3」アーキテクチャなら、IntelのXeonアーキテクチャで、2ウェイシステムから32ウェイまでのシステムに対応することができます。これは膨大なチャンスをもたらします。
--x86サーバの主流は小型サーバです。なぜ、IBMは大型サーバに力を入れているのですか。
私は多くの企業--通常はグローバル企業と話をしてきましたが、これらの企業はハイエンドのx86サーバを、主に3つの用途に利用しています。「SQL Server 2005」、SAP(の財務ソフトウェア)、そして1台の大型サーバをさまざまに切り分け、組み合わせて(多数の小型サーバの代わりに使って)いる顧客です。企業は64ビット対応のSQL Server 2005が登場するのを待っていました。これが登場した今は、どのサーバを使用するかを検討しています。」。またSAP製品の実装を検討している企業も多くあり、今後の方向性を決定しようとしています。
新興市場にも需要はあります。ロシアの銀行はその一例です。この地域の企業には既存のインフラがありません。非常に魅力的な価格で、強力な機能を手に入れることができます。
--x86サーバの売上のうち、ハイエンドの割合はどのくらいですか。
そのような分類は行っていませんし、セグメントごとの売上も公開していません。しかし、IDCのデータを見ると、ほとんどの企業は2ウェイシステムを採用していることが分かります。この状況は今後も続くでしょう。しかし、ハイエンドの大型x86サーバ市場も着実に成長しています。これは64ビット機能の登場によるものです。プロセッサ分野でも、アプリケーションやオペレーティングシステムの分野でも、さらに多くの変化が起きるでしょう。
--x86サーバの性能が向上すると、IBMのUNIXサーバと競合することになるのでは。
UNIX市場のローエンドでは、確かにLintel(Intel+Linux)への移行が大規模に進んでいます。しかし、ハイエンドの価値基準はローエンドとは違います。ハイエンドでは、ひとつのベンダーがハードウェア、プロセッサ、サーバアーキテクチャ、マイクロコード、オペレーティングシステムなどを提供します。すべてを一カ所から調達することで、マルチベンダーでは得られない相乗効果や堅牢性が手に入るのです。x86の世界の価値基準はこれとは違います。この分野にはさまざまなアーキテクチャが混在していて、オペレーティングシステムを提供するコミュニティや企業もさまざまです。