Final Cut ProからPremiere Proに--動画クリエイターの愛用ツールに異変か

末岡洋子

2014-04-17 12:11

 動画クリエイターたちの間で静かな異変が起きているのだろうか――。これまで動画編集ソフトの定番的存在だったというAppleの「Final Cut Pro」から、「Adobe Premiere Pro」に移行したクリエイター4人が3月初め、米テキサス州オースティンで開催した「South by Southwest(SXSW)2014」においてDellが開催したワークステーションのメディアイベントに集まった。これまで使っていたツールへの不満や標準ベースの利点について経験を語った。

 「5年前、インディペンデント系の標準はFinal Cut Proだった。Final Cut Proは動画編集の定番で、自分たちはこの製品でプロとして育った」というのはChet Garner氏。地元オースティンでテレビ向け旅行番組『The DayTripper』を製作するエグゼクティブプロデューサー兼クリエイターだ。

 そんなGarner氏がFinal Cut Proから離れることになったきっかけは、Appleが2011年に発表した「Final Cut Pro X」だったという。64ビット対応、ユーザーインターフェースの一新などとともに、Appleが実施した機能側での大胆な変更も話題となった。しかし、「DVD Studio Pro」などのFinal Cut Studioが一部しか含まれないなど、主としてプロ向けの機能が削減され、より一般ユーザーに近づこうとする印象を持ったという。

 Garner氏はこのようなAppleの変更に対し、さまざまな不満を挙げた。例えば、ビデオテープへの書き出しをサポートしない「テープレス」機能。

 「現実はテープレスに追いついていない。現在もテープで納品するケースが多い」と漏らす。必然的に他のソフトウェアを探すことになり、Adobeのツールを選択するに至ったという。

クリエイター4人が集まり「異変」について語った
クリエイター4人が集まり「異変」について語った

「将来」の押しつけだった

 「Appleは意識的にFinal Cut Pro 7を切り捨ててXへと変更した。“これが将来だ”と自分たちの将来へのビジョンを一方的に押し付けているが、われわれの現実と連携していない」とGarner氏、「Final Cut Pro 7を使い続けることは動かない馬に乗っているようなもの」と言い切る。

 Garner氏と同じような状況だったのが、SparksightのDrew Wolber氏だ。Sparksightはやはり地元オースティンのプロダクションで、コマーシャル動画やグラフィックデザインなどを手掛ける。Wolber氏はそこでコマーシャルプロダクション担当ディレクターを務める。

 大学ではMacとFinal Cut Proで映像編集を学んだというWolber氏だが「Final Cut Pro Xがリリースされたとき、この方向にはいきたくないと思った」と話す。すでにエフェクトで「Adobe After Effects」を利用していたこともあり、AdobeのCreative Cloudへの移行を決意した。

 Wolber氏はこの際、ハードウェアをDellのPrecisionワークステーションに乗り換えた。Final Cut Pro Xがソフトウェアとハードウェアでの移行に背中を押した形だ。Adobe/Dellの組み合わせの利点は「単にハードウェアを一新できただけでなく、カスタマイズ性も優れていた」とのこと。「単なる代替ではなく、優れた代替になった」と振り返る。

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