1人の男と「大胆なまでの単純化」という魔法の言葉は、ウェブ開発の世界を変えることができるだろうか。
コペンハーゲン在住で26歳になるDavid Heinemeier Hanssonは、ウェブ開発者の生産性を上げるフレームワークを作り、ツールパッケージ製品をオープンソースプロジェクトとしてリリースした。
「Ruby on Rails」と称されるHanssonのソフトウェアは、発表されてからまだ1年余りであるものの、多くの開発者や、トレンドに追われるソフトウェア開発界の現状に敏感な企業幹部らの間で人気を獲得し始めている。
実用的かつ生産的なウェブ開発フレームワークを作ろうとするHanssonの挑戦は、少数の企業が幅をきかす開発分野であっても、1人の人間が現況を打破することができるという実例だ。
Hanssonは、プログラマの働き方に影響力を及ぼしてきたコンピュータ科学の常識を打ち壊し、「聖域に踏み込む」ことが秘訣だと語っている。多くの場合、ソフトウェアベンダーは難解な問題を扱うよう製品をデザインするが、これが無駄な複雑性につながっているというのだ。
Hanssonによれば、Ruby on Railsプロジェクトの目的は、GoogleやAmazon.comのエンジニアがこぞって利用するような洗練された開発フレームワークを提供することではないという。その代わり、ウェブ開発者が日々の大半を費やしている、データベース修正といった地味な作業に取り組むためのテンプレートやひな形を作るのに力を尽くしたと、Hanssonは述べている。
「世界で最も困難な問題にも対処できる定型やツールなら、ごく一般的な問題を解決するのにもうまく活用できるという、よくある妄想を打ち壊したいと思っている」(Hansson)
Ruby on Railsの使用率は、PHPやJava、Microsoft製ツールなどには及ばない。だが、新製品の人気向上にも一役買う、影響力の大きなプログラマらが、これに関心を示し始めている。
Javaに関する書籍の著者で、最新のJavaウェブプログラミングモデルの技術委員会メンバーでもあるDavid Gearyは、Ruby on Railsは類似のJavaフレームワークと比べ動作が5〜10倍速いと指摘する。ちょうど10年前のJavaに対してそうであったように、開発者らはRuby on Railsが生産性を上げてくれると、大きな興奮を感じているとGearyは話した。