日本のソフトウェアの品質向上を目指し、1月5日付より本格的に事業を開始したSQEジャパン。社名の「SQE」は「Software Quality Engineering」の略だ。すでに米国では1986年よりフロリダ州を拠点として活動しており、MicrosoftやCisco Systemsなどをはじめとする1000社以上の顧客を抱えている。日本での事業開始にあたり、同社は1月16日、都内にて記者会見を開催した。
SQEジャパンの社長に就任したのは、コンピュータ・アソシエイツや日本RSA(現RSAセキュリティ)、アスクジーブスジャパン、マーキュリー・インタラクティブ・ジャパンなど、数々のIT企業にて社長を務めた山中義晴氏だ。同氏は、国内のシステム開発プロジェクトが、開発の遅延や予算オーバーなどの理由から4個に3個は失敗しているとして、生産性と品質の低さを指摘した。その原因として「日本人はリスクマネージメントやコミュニケーションが得意でない。発注者側と受注者側の意識のズレも大きく、要求仕様の固め方や開発手法、テスト計画が体系化されていない」などの理由を挙げている。こうした状況について同氏は、「日本のIT産業には、製造業のような生産管理手法が存在しない。国力アップのためにも日本のIT産業は改革が必要だ」と述べた。
SQEジャパンでは、こうした日本におけるソフトウェア開発手法を改革し、IT業界の活性化と国際競争力のあるSEの育成を目指して設立された。同社の設立趣旨は、営利の追求よりもソフトウェア開発手法における最新テクノロジーのリーダー的役割を担い、コンサルティングや教育に力を入れることだ。具体的には、最新ソフトウェア開発手法の普及や啓蒙活動のほか、新しい要求エンジニアリングや品質管理法の教育、ソフトウェア開発方式などの標準化推進、ソフトウェア品質エンジニア認定制度の主催、ソフトウェア品質検証サービスの提供などを行う。
中でも特徴的なのが、同社が提唱する新型開発方式「ソフトウェアジャストインタイム」(SWJIT)だ。SWJITは、製造業の品質管理のノウハウをシステム開発に取り入れる考え方で、ソフトウェアの要求定義がなされてから製品としてできあがるまでの行程を可視化しようというものだ。「行程のすべてが見えることは、製造業においては当然のことだ。それがソフトウェアの開発では中が見えなくなる。これではまともな成果物が作れない」(山中氏)
従来であれば、テスト行程は開発プロセスの最後にのみ行われていたが、SWJIT方式では、要件定義やアーキテクチャの設計、コーディングなどのすべての課程においてテストが用意されている。例えば、これまでの要求仕様書では、成果物が正しくできたかどうかを判断するための数値が入っていないことがあったが、この段階で必ず数値が入るようにする。
また、顧客からの要求データベースを共有し、共通部分と個別に開発すべき部分を分ける。これにより、人的資源や時間を削減し、生産性の向上を実現する。
SQEプリンシプルコンサルタントで、「図解 よくわかるソフトウェア・ジャストインタイム」の著者の1人でもある前田卓雄氏は、「プロセスを可視化すれば、要求の変更や追加も簡単に追跡できるようになる。日本人の人口が減り、開発者も減ることになるが、ソフトウェアの需要が減ることはない。ここで生産性と品質を高めなくては、日本のソフトウェア産業は生き残れない」と語った。