NECは4月1日、自動車製造業のスズキにベクトル型スーパーコンピュータ「SX-8/8A」1ノードと「SX-6/8A」1ノードを納入したことを明らかにした。スズキは、CAE(Computer Aided Engineering)を用いた性能開発や衝突時のシミュレーション解析などに利用する。
SX-8はNECが2004年10月に販売を始めたベクトル型スーパーコンピュータで、512ノードの最大構成時に65テラFLOPS(1秒当たり浮動小数点演算を65兆回)の性能を持つ。今回スズキに納入した構成は1ノード(128G FLOPS)で、1秒当たり1280億回の浮動小数点演算が可能である。もう1台のSX-6はSX-8の下位モデルであり、スズキは1ノード(64G FLOPS)の構成で利用する。
ベクトル型とは、浮動小数点計算に特化した専用のプロセッサを用いるアーキテクチャであり、比較的高価だが性能が高いという特徴を持つ。一方、スーパーコンピュータの新潮流として出荷ラッシュが続くスカラー型は、汎用のプロセッサを多数用いるアーキテクチャであり、比較的安価になる。
専用プロセッサを使うベクトル型は、汎用プロセッサを使うスカラー型よりも、プロセッサとメモリー間のデータ転送バンド幅を広く取れる。このため、気象現象を演算する「地球シミュレータ」のような、大容量のデータをノード全体で高速に処理する用途では、ベクトル型の優位が続くと見られている。
スカラー型は、どちらかと言えば汎用のブレードサーバを用いたグリッドコンピューティングのイメージに近く、処理を分割して個々のノードに演算させ、処理の結果を集約するといった用途で価格性能比が高まる。