サンフランシスコ発--Intelの仮想化技術「Virtualization Technology(VT)」の第一世代が同社の大半の製品に組み込まれたいま、同社はこの技術の性能向上に目を向け始めている。
仮想化技術は、1台のコンピュータ上で複数のOSを同時に動作させるためのもので、複数のタスクをより効率的に動かそうと考える人々が注目しているアイデアだ。しかし、「ハイパーバイザー」あるいは「バーチャルマシンマネージャ」と呼ばれる仮想化コントロールソフトは、メモリやI/Oなどのリソースを管理するため、パフォーマンスへの負荷が大きい。
Intelでは、このパフォーマンスへの負荷の問題を何とかしようとしている。
「今後の実装の開発を進めながら、このアーキテクチャ基盤の制約のなかで、ソフトウェアを変更することなくパフォーマンスを引き上げていく。その後、アーキテクチャの拡張も進めていく」とIntelのRichard Uhlig(シニアプリンシパルエンジニア)は、Intel Developer Forumでのインタビューにで語った。
Intelでは、仮想化を容易にすべくチップへのVT機能の組み込みを始めており、またライバルのAdvanced Micro Devices(AMD)も、今年中にRev Fプロセッサで同等のAVT機能を売り出すことになっている。
Intelは、VTの最初のバージョンで、バーチャルマシンソフトの機能向上を目標としていた。たとえば、x86コンピュータの仮想化製品分野で首位に立つEMCの「VMware」は、VTを利用しながら、バーチャルマシン上で64ビットOSを動かすことができる。また、競合するオープンソースの「Xen」は、VT対応システムでMicrosoft Windowsを動かすことができる。
Intelでは、VT関連の改善項目の1つとして、「拡張ページテーブル」と呼ばれる機能の向上を計画している。拡張ページテーブルは「ネステドページテーブル」と呼ばれるAMDの仮想化技術とよく似た技術で、いずれもバーチャルマシンのメモリ管理速度を向上させるためのものだ。
バーチャルマシンを持たないコンピュータでは、OSはメモリのアドレスが0から上に広がっていくと想定する。しかし、多くのバーチャルマシンはコンピュータのメモリを共有するため、0が開始アドレスにならず、メモリのアドレスが途中で飛ぶこともあると、Uhligは指摘した。
したがって、ハイパーバイザーでは、バーチャルマシンのメモリアドレスを実際のコンピュータが使用する実アドレスに変換する「ページテーブルシャドウイング」という作業が重要な仕事の1つになってくる。そして、変換作業が必要になればなるほどバーチャルマシンの速度は低下し、メモリ領域を定期的に切り替えるデータベースなどのプログラムではパフォーマンスが10〜25%低下すると、Uhligは説明した。
VTの新バージョンには、「ページテーブルウォーカー」と呼ばれる機能が搭載されることになる。この機能を使えば、ハイパーバイザーではなくプロセッサがメモリの問題を管理できるようになると、Uhligは説明した。同氏によると、オーバーヘッドが「0になる」ことはないものの、ページテーブルウォーカーならソフトウェアベースの機能よりも大幅に高速化できるという。
Intelは、2005年にサーバ市場に投入したXeonチップ「Paxville」に「VT-x」と呼ばれるVT技術を実装し、また2006年5月もしくは6月には、より広範に利用される「Dempsey」プロセッサもサーバ市場に投入されることになっている。さらに、Itaniumプロセッサ向けの「VT-i」バージョンは、Intel「Montecito」チップ搭載システムとともに第3四半期以降に登場する予定だ。
ハードウェアサポートでもう1つ仮想化の改善につながるのが、ネットワーク機能など各種の入出力(I/O)処理への同技術の拡張だ。Intelは、I/Oの仮想化に対応する「VT-d」仕様を米国時間7日に発表したが、これはAMDによる同様の対応から1カ月遅れの発表となった。
しかし、ネットワークカードなどの各種周辺機器が利用するPCI標準などの変更も必要となるため、より高度なネットワーク関連の変更はまだ先のことになる。たとえば、Intelでは、ネットワークカードの容量を異なるバーチャルマシン間で分割するというアイデアなどのサポートを計画している。
Intelのシニア研究員Rajesh Sankaranによると、PCI Special Interest Groupでは、このような分割処理を可能にする機能の追加作業が進行中だという。この新仕様は今年中の登場が予定されており、これをサポートする初めての製品は2007年に登場する見込みだと、同氏は語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ