Intelとの競合が激しさを増す中、Advanced Micro Devices(AMD)は65ナノメートルプロセスで製造したプロセッサの出荷を開始した。
65ナノメートルプロセスのAMD製プロセッサは、90ナノメートルプロセスのものに比べ、同じ速度で動作させた際に消費電力を約30%低減できる。65ナノメートルプロセスによる最初のプロセッサを出荷するにあたり、事実上すべての改善点は電力消費量の削減につながっていると、AMDのロジック技術開発担当バイスプレジデントNick Kepler氏は述べた。
AMDでは今後、デスクトップ向け、ノートPC向け、サーバ向けといった各種プロセッサの設計で設計者たちが達成しようと目指すものに応じ、省電力とパフォーマンス向上のバランスを図っていく。
AMDは今回初めて、プロセッサ内トランジスタのシリコン引き伸ばしにシリコンゲルマニウム膜を採用した。これによりパフォーマンスが向上したことが、省電力にも一役買っている。
シリコンを引き伸ばすと、より大きなゲルマニウム原子がシリコンの原子をわずかに配列し直す。これにより電子移動が高速化するため、トランジスタのパフォーマンスが向上する。陰電子を伝えるNチャネルのトランジスタの場合、ゲルマニウムがシリコンの格子を引き伸ばすと、樹木が間引かれた森を駆け抜ける鹿のように、電子の移動度が高まる。いっぽう、陽電子を伝えるPチャネルのトランジスタでは、ゲルマニウムはシリコン原子の間隔を狭めてしまう。
「われわれは、65ナノメートルと一緒に(シリコンゲルマニウム採用を)計画していた。しかし、結果的にメリットがなければ、手を引く覚悟はできていた。シリコンゲルマニウムを埋め込んだ層の追加は、おそらく最大の変化だろう」とKepler氏は語った。
既存の90ナノメートルプロセッサでシリコンを引き伸ばすために、AMD(とIBM)はシリコンゲルマニウムの引き伸ばしとは異なる「Dual Stress Liners」(DSL)という技術を使っていた。Intelはすでに、シリコンゲルマニウムを広範囲で採用している。
AMDは65ナノメートルプロセッサでもDSL技術を採用する見込みだが、Pチャネルトランジスタにはシリコンゲルマニウムを利用する技術も採用する。一方、Nチャネルトランジスタには「Stress Memory Technology」(SMT)という技術を利用して歪みをさらに加える。SMTでは、Nチャネルトランジスタにいったんシリコンゲルマニウム膜を挿入した後、それを取り除く。膜を取り除いても、膜が存在していたことで構造が変わり歪みができる(AMDはこの技術の概要を2005年に発表している)。
AMDとIBMは当初、ゲルマニウムの層を挿入した後に蒸発させる技術を共同開発していたが、Kepler氏によると、SMTはこれを発展させた技術というわけではないという。
65ナノメートルプロセスを採用したAMDのプロセッサは、まずデスクトップ向けに出荷される。ノートブックおよびサーバ用のプロセッサは、その後やや遅れて出荷の予定だ。
IntelとAMDは生産競争の真っ只中にある。Intelが最初の65ナノメートルプロセッサを出荷したのは2005年10月のことだった。一般に、65ナノメートルプロセスで製造したプロセッサは、従来の90ナノメートルプロセッサよりも高性能で消費電力も小さい(90ナノメートルや65ナノメートルというのは、プロセッサ上の回路線幅の平均値を表す。ナノメートルは10億分の1メートル)。