米国立標準技術研究所、フレキシブルなメモリスタを開発

文:Tom Espiner(ZDNet UK) 翻訳校正:編集部

2009-06-05 12:52

 米国立標準技術研究所(NIST)がフレキシブルなメモリスタを開発し、新たなメモリ技術への扉を開いた。

 2008年に初めてデモが公開されたこの種のメモリ機器がフレキシブルな形で提示されるのは、今回が初めてだ。

 NISTの米国時間6月4日の発表によると、メモリスタ(「メモリレジスタ」に由来)は、日焼け止めや歯磨き粉の成分の1つとしてよく用いられる酸化チタンを、フレキシブルな透明ポリマーシートの上に付着させることで、作り出されたという。NISTの研究チームは、電気接点を加えることによって、10ボルト以下で動作する上に、電源を切った後も記憶内容を保持し、4000回以上曲げた後でも機能する、フレキシブルなメモリスイッチを開発した。

 「わたしたちは、フレキシブルな電子機器の開発と測定学(測定に関する学問)を前進させるフレキシブルなメモリコンポーネントを、広範な普及が可能なコストで作ることを目指していた」とNISTの研究者であるNadineGergel-Hackett氏は、声明で述べた。「わたしたちの機器の動的な部分は、液体で作ることが可能なので、将来的には、わたしたちが今日オーバーヘッド透明シートにスライドをプリントするのと同じくらい簡単かつ安価に、メモリ機器全体をプリントできるようになるかもしれない」(Gergel-Hackett氏)

 NIST研究チームは、あまり費用のかからない付着方法を用いて、メモリスタを作り出している。彼らは、酸化チタンを「ソルゲル」液に入れてかき混ぜ、それを透明シートに付着させた後、ポリマーの上で室温で乾かした。研究チームは「AFlexibleSolution-ProcessedMemristor」と題された論文の中で、メモリスタの不揮発状態は14日間持続したと述べた。

 メモリスタは、1970年代に仮説が立てられたが、それがHewlett-Packardの研究者によって実現されたのは、2008年のことだった。メモリスタは、それ自体に電流が流れていないときでも、メモリの状態を保持できる。メモリスタには、電流に対する抵抗があるが、その抵抗は、電流の量や向きによって変化する。メモリ回路では、0を記録するときは電流を一方に流し、1を記録するときは電流を他方に流す。これに伴って、メモリスタの電導率は上下するのだ。抵抗は、後で再度読み取ることもできる。NISTのメモリスタの場合、少なくとも14日間は読み取りが可能だ。

フレキシブルメモリスタ

 NISTの声明によると、フレキシブルメモリスタによって、心拍数や血糖値のモニタリングなどの医学用途を含む、さまざまな技術で使用できるフレキシブルチップの開発が可能になるという。

この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。 原文へ

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