「シマンテックは本当にすばらしい環境を持っているなぁ。恵まれている会社だ」
これが、2008年4月1日にシマンテック 代表取締役社長に就任した加賀山進氏の同社に対する第一印象だ。天井も高くデスクレイアウトにも余裕があるきれいなオフィス、その環境を目の当たりにした同氏は、全社員を集めた会議の席で「皆さん幸せですね」と思わず口にする。この第一印象からおよそ7カ月が経過し、シマンテックという会社に対する加賀山氏のイメージはどう変化したのだろうか。
シマンテックは製品戦略の背骨がしっかりしている

入社後加賀山氏は、社長の仕事としてまずはシマンテック日本法人のビジョンを作ることとなる。ビジョンを明確にし、それを社員と共有しコミュニケーションすることは、新任社長としていち早く実施すべき重要な職務だ。その際、企業戦略についてはすでにワールドワイドで1本化したものができあがっていたため、苦労はなかったと言う。
「プロダクトカンパニーは製品戦略というものを前面に押し出せるため、シマンテックも企業としてのグローバル戦略は背骨が一本通っている状況だった。あとは、中骨、小骨の部分をそれぞれの国の状況などに合わせ作っていければ、企業として一枚岩になれる」
企業の中核となる背骨部分については、「グローバル戦略として地に足がついており、その中身も実によく練られているものだとすぐに感じた」と加賀山氏は言う。日本で独自に背骨に当たる部分を定義する必要はまったくなかったのだ。
「製品戦略において、シマンテックは自分たちが活動すべき領域をきちんと定義できている。ソフトウェアベンダーは、定義したその領域でナンバーワンになることが重要。一番になれば、そこから不公平なほどの果実を得ることができる。MicrosoftのOSやOracleのデータベースなどがまさにそのいい例だ。ナンバーワンになることで市場をリードし、圧倒的な優位性が生まれる」
ただし、提供する製品の最も強い領域をきちんと定義することは容易ではない。加賀山氏は、シマンテックを外から見ていたときには、領域の定義に迷いがあるのではと感じていた。それが、実際にシマンテックに加わり、本社のトップエグゼクティブから直接話を聞く機会を得てからは、筋の通った戦略がはっきりと存在していると理解でき、その内容に感動すら覚えたと言う。その戦略とは、情報が中心であり、その情報を安全に管理するということだ。
「不況下にあっても、データ量の爆発的な増加は変わらない。同時に、悪意のある攻撃も増え続けている。情報を安全に管理するという我々の製品が対象とする領域は、これからも確実に成長する市場だと確信している」と加賀山氏。むしろ、「この分野のリーダー企業であるシマンテックが活性化しなければ市場は広がらない」と話す。