7月7日、マイクロソフトの日本法人が、Windows 7の国内発売日を10月22日にすると発表した。ご存じのとおり、米国では、6月2日(現地時間)に既に日本を含めたワールドワイドでの発売予定日が公表されており、日本では実に1カ月以上遅れての公式発表となった。
実はこの間、日本では6月26日に、Windows 7の販売価格とキャンペーン施策についての発表が行われていたのだが、なぜか発売日については「後日発表」とされた。なぜ、日本での発売日の公表が遅れたのだろうか。
要因は、発売日にいくつかの選択肢があり、それによって検討が重ねられていたことだ。
米国との時差の関係で米国より先行発売とするか、はたまた同時間の発売となる23日とするか。あるいは、深夜0時の発売とするか。集客しやすい、金曜日の夜中となる24日の発売とするか……。日本法人にとっては、選択肢が広かったのだ。
最終的には、販売店をはじめとするパートナー各社の意見を聞き、「なるべく早く発売してほしい」という要望の大きさから、米国よりも先行となる日本時間の22日に決定した。実際、量販店の間からは、「PC売り場は10月22日から年末商戦がスタート」という、歓迎の声が聞かれている。商売優先の結果が、22日の発売になったというわけだ。
だが、もうひとつ、日本での公表が遅れた理由がある。それは、MSKK社長の樋口泰行氏がこだわった、「7月7日でのWindows 7」の発売日公表というシナリオ。そう「777(スリーセブン)」の験担ぎというわけだ。
マイクロソフト関係者によると、7月7日の方針説明会開催の日程は、樋口社長がWindows 7の「7」にちなんで、こだわって決定したという。そして、この日にWindows 7の発売日を自ら発表したかったということなのだろう。
このMSKKによる記者向けの経営方針説明会は毎年行われているのだが、確かに、例年の日程を見ると、曜日の関係もあるが、2008年は「1日」、2007年は「9日」、2006年は「13日」というように「7日」になったことはない。樋口氏は、まず「7日」の記者向け方針説明会の日程を決め、その翌日に社員総会を開催して、社員に方針を発表するという形としたのだ。
あえて、今年の説明会を「7日」に設定したMSKKの意気込みは相当のものだったと言えるだろう。会見の詳細は別稿に譲るが、その「意気込み」を表す証拠のひとつに、世界で3本しかない、「Windows 7特製ネクタイ」を社長の樋口氏以下3人が身につけて参加したことがあげられよう。
「ロゴをあしらったTシャツなどはよく作るが、方針説明の場でTシャツというわけにもいかず、そこで、急遽、ネクタイを作った」というのは、コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部コンシューマーWindows本部本部長の藤本恭史氏。自らは、当日、青いネクタイを締めた。
制作を担当したのは、赤いネクタイをしていたビジネスWindows本部本部長の中川哲氏。「金曜日になにか本気ぶりを示せるものをやろうということで盛り上がり、そこでネクタイを作ることになった」と話す。「もともとの企画は、樋口社長の奥さんによるもの」という秘話も明かしてくれた。中川氏は、週末にはネクタイづくりに奔走し、7日の朝、会場でそれぞれに完成品が配られた。実際は、「万が一のため、自分のネクタイを持ってきてくれ、という指示もあった」(藤本氏)というドタバタぶりだ。
そして、黄色いネクタイをした樋口氏は、「もう少し、ロゴマークが大きい方がいいんじゃないか、とも言ったのだが、遠くからみると、高級ブランドのデザインにも見える」と、気に入った様子。だが、突貫工事で作ったということもあり、ネクタイとしての素材はいまひとつ。「もう一度、ネクタイを締めることはできないんじゃないか」(樋口氏)というレベルだ。つまり、7月7日1回きりの使用に限定したレアモデルだったのだ。
これを知った一部の記者からの評判はまずまず。「ネクタイをする社員は、これをして訪問すれば、Windows 7の話にスムーズに入れる」(藤本氏)という話もあったので、もしかするとこの急造「Windows 7ネクタイ」が量産され、スーツを着る社員に支給される日がある……のかもしれない。