日立製作所は7月28日、日立情報システムズ、日立ソフトウェアエンジニアリング、日立システムアンドサービス、日立プラントテクノロジー、日立マクセルの上場連結子会社5社を完全子会社化すると発表した。
情報通信システム、社会インフラ、リチウムイオン電池に関するビジネス強化のため、各分野でこれまで事業を行ってきた5社と日立本体の連携を高める。各子会社に対する現在の日立の出資比率はそれぞれ半分から3分の2程度だが、残りの普通株式などについて公開買い付けを実施し、今年度内をめどに完全子会社化する。買い付けに要する費用は合計2790億円を見込む。
日立は2008年度通年連結決算で最終損益が7800億円という大幅な赤字となっているが、ICTに支えられた高度な社会インフラを構築する「社会イノベーション事業」への注力を再生戦略の中核に据えており、今回のグループ再編は日立としての同事業の強化を狙うもの。同日開催された2009年度第1四半期連結決算発表会の席上で、同社執行役会長兼社長の川村隆氏はグループ再編の意図を説明した。
日立情報、日立ソフト、日立システムの3社を完全子会社化する情報通信システム事業に関しては、データセンター、クラウドコンピューティング関連、海外市場におけるコンサルティング、組み込みソフトウェアなどでの体制拡充を行い、ITライフサイクルの全般にわたってワンストップでサービスを提供することを狙う。
日立プラントの社会インフラ事業には、電力、交通、道路、水道などのシステムが含まれるが、新興国において需要が拡大しているほか、先進国においても環境対応や効率化といった要求が高まっており、収益拡大が見込める。英国に納入する鉄道に関しては「車両を納めるだけでなく、運行管理システムやメンテナンス工場も動かしている」(川村氏)といい、他の分野においても同様に納入後の管理、運営も含めたトータルでの受注を拡大したい考え。
日立マクセルは一次電池、二次電池、記録媒体などの事業を行っているが、環境対応などで需要の拡大が予想されるリチウムイオン電池事業の強化を目的とした完全子会社化となる。
「これまで6億セルを出荷しているが、1個も燃えたことがない」(川村氏)と、過去リコールゼロの高信頼性を売り物にし、現在主力の民生機器向けだけでなく、今後は自動車や鉄道といった産業用途にも拡大していく考え。
川村氏は、さまざまな分野の技術を組み合わせて提供する融合製品への需要が近年急激に強くなったとし、従来の体制では「大きなシステムのビジネスができない」環境に変化してきたと背景を説明する。
少品種大量生産の市場においては分業が有効だが、社会イノベーション事業では材料、キーデバイスからサービスまでを統合的に提供できることが強みになるとの認識で、「集中的改革で日立を再生する。2010年度には最終損益を何としても黒字にしたい」と述べた。