富士通は6月21日、午前10時から新横浜プリンスホテルで第110回定時株主総会を開催した。議長を務めた同社執行役員社長の山本正己氏は総会の冒頭、「元社長の野副氏の件では、大変ご心配をおかけしていることを心よりお詫び申し上げる」として、総会のなかで代表取締役会長の間塚道義氏などから経緯を説明することを示した。
構造改革が成果を生み「無借金経営に近い状況」
事業報告および対処すべき課題のなかで山本氏は、「構造改革に注力してきたことで経営基盤が強くなり、厳しい環境利益を出せるようになってきた。赤字のビジネスセグメントは無くなり、有利子負債はここ数年で最も少なくなり、無借金経営に近い状況にある。ICT産業は緩やかな回復基調にあり、今年度下期からは国内における投資改革が期待できる。富士通グループとして、守りから攻めに転じる年になる。お客様とともに新しい成長戦略を形にする年にしたい」としたほか、「社長として、明るく元気な会社を目指していく。自ら変革を続け、スピードとチャレンジにより、社会に貢献していきたい」とした。
元社長の辞任問題「事業と切り離し、今後も毅然として対応」
同社元社長の野副州旦氏に関する件では、間塚氏が約28分間に渡って裁判の経緯や富士通の姿勢などを説明。常勤監査役の小倉正道氏からは、監査役会の考え方などについて約6分間に渡って説明があった。さらに山本社長は、文書で寄せられた野副氏からの質問に対して一括回答し、富士通側からの説明で約40分間を割くことになった。
会長の間塚氏は、「横浜地方裁判所川崎支部での第1審、および東京高等裁判所の第2審は、当社の言い分を全面的に認めたものである。当社の正当性が十分に証明されたものである。また、東京高裁による見解は、暴力団は合法的な企業活動と見せかける形で資金確保を行う動きがみられており、企業としてはより慎重な対処が必要である。反社会的勢力に対しては、その情報が公式ないし確認情報である前の風評、うわさの段階から慎重に情報を収集し、その確認に努める必要がある。富士通の経営陣がとった対応は、こうした動きに対して鋭敏に判断したものとしており、企業姿勢を正しく評価してもらい、経済界一般へのメッセージでもある。また、野副氏の辞任が虚偽の事実のでっち上げなどによるものでないことは明白になった」とした。
また、「反社会的勢力であることが確認できないのであれば、付き合って良いというわけではなく、確認できない以上は付き合ってはいけないという判断を、富士通の社長はすべきである。野副氏は、富士通グループ全体の万が一のリスクよりも、個人的な信頼関係を優先させたのであり、いかに有能な人物であろうと、このようなリスク感覚では、当社のトップを任せることはできない。富士通は今後ともそういう企業でありたいと強く思っている」とした。