Microsoftは米国時間7月23日、半導体の設計を手がけるARMとの契約を更改した。あくまでも理屈の上の話だが、この更改によって、Microsoftは独自のARMプロセッサを設計できるようになった。
新たな契約は、アーキテクチャのライセンス契約であり、Microsoftは独自のARMプロセッサを設計できるようになる。Qualcommもこれと同様の契約に基づいて、Dellのタブレット「Streak」やGoogleのスマートフォン「Nexus One」などの製品で採用されているプロセッサ「Snapdragon」を製造している。
Microsoftで戦略的ソフトウェアおよび半導体アーキテクチャ担当のゼネラルマネージャーを務めるKD Hallman氏は、声明で次のように述べた。「ARMは当社にとって重要なパートナーであり、MicrosoftはARMのアーキテクチャ上で稼働する複数のオペレーティングシステムを提供している。中でも主要な製品は、『Windows Embedded』と『Windows Phone』だ。ARMの技術が利用しやすくなることで、われわれはARMベースの製品を対象とした研究開発活動を強化できるようになる」
Microsoftは、今回の契約についてこれ以上コメントしておらず、詳細は今後も公表されない予定だ。
Insight 64で主任アナリストを務めるNathan Brookwood氏によると、今後可能性のある動きとして興味深いものがいくつかあるという。同氏は、「独自の(プロセッシング)コアを開発するとなると、費用も時間もかかる。ARMの設計者グループにまさる設計力があるという自信が必要だ。それに対し、ARMのコアを使い、好きなグラフィックコントローラなどと組み合わせて1つのシステムオンチップを構成するのは、きわめて理にかなっている」と述べた。
ARMのライセンス条件には、こうしたまぎれもない利点があるとBrookwood氏は指摘している。これは、Intelの「Atom」プロセッサでは真似できない点だ。つまり、MicrosoftなどのサードパーティーがAtomの設計を使って独自のプロセッサを設計することは難しい。
ARMプロセッサの設計を活用している製品メーカーの最も顕著な例としては、Appleが有名だ。「Appleが『Apple A4』(プロセッサ)でやったことを見るといい。同社は、『ARM Cortex』コアと自社で選んだグラフィックチップなどを組み合わせて、事実上、独自のシステムオンチップを作り上げることができた」と、Brookwood氏は述べた。
一方、半導体に関するコンサルティング企業The Linley GroupのLinley Gwennap氏はMicrosoftの意図について、大きな謎だとしている。
「チップを設計するつもりがなければ、アーキテクチャのライセンスなど取得しない。今のところ、Microsoftが独自のプロセッサを開発しているのは『Xbox』だけだ。したがって、(Microsoftが)このライセンスを利用して次世代型のXbox用プロセッサを開発するということはあり得る」(Gwennap氏)
Gwennap氏は、Microsoftがデータセンター向けにARMチップを設計したがっている可能性もあるとして、次のように述べた。「Microsoftは、まぎれもなく巨大なデータセンターの運営事業者だ。もしかしたら、サーバ向けに独自のプロセッサを設計して、こうしたデータセンター向けに社内で利用するつもりなのかもしれない」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。