日本の企業は、クラウドコンピューティングに対する理解は進んでいるが、クラウドへの投資目的としては他国が「戦略的投資」とする中、日本は「コスト削減策」とする企業が多い――ヴイエムウェアが11月9日に発表した「クラウドコンピューティングに関する企業意識調査」から、クラウドに対する日本企業のこのような意識が浮き彫りになった。
この調査は、VMwareがシンガポールの調査会社SpringBoard Researchに依頼して行った。調査の対象となったのはアジア地域の企業6953社。うち1181社が日本に拠点を置く企業(外資系企業の在日法人を含む)で、システム部門または業務部門の意思決定者を対象に調査が実施された。
この調査にて、日本の企業はクラウドコンピューティングに対する理解度が高いことがわかった。クラウドに対する理解度を10段階の自己評価で尋ねたところ、上位3国はオーストラリア(7.5)、日本(7.1)、インド(7.0)となった。この結果について、スプリングボードリサーチ リサーチマネージャーの柏木成美氏は「クラウドの理解度はIT市場の成熟度とほぼ比例している」と述べている。また、クラウドが自社に直接的な影響を与えるかどうかについては、日本企業の92%がそう認識しており、調査対象となったアジア諸国の中で一番高い意識を持っていることがわかった。
導入を検討しているクラウドのタイプについては、日本企業の34%がプライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドを、26%の企業がプライベートクラウドを、15%の企業がパブリッククラウドを導入済みまたは導入を検討中だという。
一方、クラウド導入にあたって障壁となるのは、アジア全体と同様、日本市場でも「セキュリティ」を挙げる企業がトップで57%にのぼった。ほかにも、「既存リソースの統合」(45%)、「データ保護」(39%)を懸念事項として挙げる企業が多かった。また、クラウド構築の基礎要件とされる項目については、「管理の自動化」と考える企業が69%、「99%以上のSLA(サービスレベルアグリーメント)」と考える企業が47%、「従量課金モデル」と考える企業が46%という結果になった。
クラウドの理解度に対する自己評価はアジア地域でトップクラスとなる日本だが、クラウドへの投資目的について、戦略投資かコスト削減策か、またはその他の目的かを聞いたところ、例えばオーストラリアの企業では48%が戦略投資と位置づけているのに対し、日本企業では59%がコスト削減策だと回答した。
柏木氏によると、コスト削減策を目的としている企業の割合は、アジア諸国全体と比較しても日本が高かったという。
また、クラウド導入のメリットについて聞いたところ、「ハードウェアコストの削減」とする企業が58%、「ビジネスニーズに応じた拡張性」とする企業が47%、「システムリソースやサーバプロビジョニングの簡素化」とする企業が41%となった。
ヴイエムウェア 代表取締役社長の三木泰雄氏は、この調査から「多くの国内企業がクラウドの導入を希望しているが、導入には管理の自動化や高いサービスレベルの実現といった課題点も指摘されている。ヴイエムウェアでは顧客のクラウドへの移行に関する支援をさらに強化していきたい」と語る。具体的な施策として三木氏は、日本においてコンサルティングサービスを強化すること、2011年第1四半期に「VMwareユーザー会」を設立すること、パートナーソリューションとの組み合わせによる付加価値提案をより強化すること、サービスプロバイダーとの提携強化でクラウド展開を支援していくことなどを挙げた。