マイクロソフトは8月22日、2006年第4四半期中の出荷が予定されている「Windows Vista」に関連し、企業のデスクトップOSとしてVistaを広範に展開する際の標準的なソリューションと位置づける「Business Desktop Deployment(BDD)2007 」についての説明会を行った。
マイクロソフト、ビジネスWindows製品部マネージャの中川哲氏は、「BDDは従来、WindowsをOEM提供しているハードウェアベンダーに提供していた技術。Vista以降は、それをエンドユーザーに対しても提供していく。企業ごと、部署ごとのセキュリティポリシーやアプリケーション環境に合わせたデスクトップの大規模展開が可能で、インストールの工数を大幅に削減できるもの」と説明する。
現在、企業内のクライアントPCに対して同一構成のOSを展開する場合、展開の規模やユーザーの環境に応じて、さまざまな手法がとられている。小規模であれば、手動でインストールと設定を行う場合も多く、大規模ならば、マイクロソフトが提供しているRemote Installation Services(RIS)やSystems Management Server(SMS)、さらにはサードパーティー製のイメージングツールなどを必要に応じて選択するといった状況だ。
Vistaとの同時リリースが予定されているBDD 2007は、こうした従来の手法の一本化を目的に、マイクロソフトがデスクトップ展開の標準化されたソリューションとして提供する技術やツールの総称となる。展開の計画、検証から、実際の展開作業、展開後の運用といった企業内デスクトップのライフサイクル全般をサポートするという。
BDD 2007による展開作業は、ひな形となる参照コンピュータの作成、ディスクイメージのキャプチャ、展開用サーバの構築、展開先PCへのイメージの展開といった流れになる。それぞれのプロセスは、個別のコマンドやツールによって実行されるが、BBD 2007では、「BBD Workbench」と呼ばれるMMCベースのフロントエンドが用意され、展開用サーバの構築を中心とした一連の作業を、GUIベースで統合的に管理できるのが特徴となる。
また、BBD 2007では、「Windows Imaging Format(WIM)」と呼ばれる新たなイメージファイルフォーマットが標準形式として採用されており、一連の展開プロセスの中で利用される。WIMの特徴としては、展開先のハードウェアに依存しないことに加え、イメージファイルの統合、分割、オフライン編集が可能といった点が挙げられている。なお、WIMファイルの作成、編集には「ImageX」、作成したWIMファイルへの更新プログラムの適用、デバイスドライバの追加などは「PkgMgr」というコマンドをそれぞれ利用する。
同社では、BDD 2007による展開シナリオとして、主に「ライトタッチインストール」「ゼロタッチインストール」の2種類があるとしている。ライトタッチは、BDDによって構築された展開用サーバ、応答用ファイル、セットアップ起動ディスクなどを用意して、クライアントPCへのセットアップまでを半自動化するもの。BDDでは、応答ファイル(Unattend.xml)作成のための「System Image Manager」と呼ばれるGUIツールも用意されている。
一方のゼロタッチインストールは、SMS2003 OS Deployment Feature Pack(SMS OSD)の機能拡張として提供されるもので、SMS 2003の管理コンソールを利用して、条件に一致したクライアントPCへのセットアップを全自動で実行できる。ただし、ゼロタッチでは、新規インストールおよび再インストールのみに対応し、ライトタッチでは可能なアップグレードインストールには対応できない。
また、BDDでは従来のRISの後継機能として、Windows Deployment Services(WDS)も用意している。WDSは、主にネットワーク経由での新規インストールを前提としており、従来のRiprepイメージを移行して利用できるという。
マイクロソフトでは、BDD 2007の利用によって、企業におけるWindows Vistaの展開の簡素化、クライアント環境の標準化による管理性の向上、運用の効率化などが図れるとしている。なお、BDD 2007の基本的なコンポーネントは、Vistaを利用する企業ユーザーには無償で提供される。