マイクロソフトは9月8日、米Microsoftの知的財産担当コーポレートバイスプレジデント兼副ゼネラルカウンシルであるマーシャル・フェルプス氏の来日に伴い、同社の「知的財産権とイノベーション」についてプレス向けに紹介する説明会を開催した。
フェルプス氏は、マイクロソフトの商標、トレードシークレット、特許権、ライセンス、事業開発、標準化、著作権などを管理する知的財産権グループ全体の責任者。米国内外における約3000件の特許や、全世界で登録されている1万1000件以上の登録商標など、マイクロソフトの知的財産権の管理、パートナーとのライセンス提携、知的財産権認知のための活動などを統括している。
「日本や米国におけるIT産業の成功は、それぞれの国が知的財産権の強化を堅持したため。今後もIT産業を成長させていくためには、両国が協力して知的財産保護のための包括的かつ国際的な取り組みを推進していく必要がある」とフェルプス氏は言う。
- 知的財産権の重要性を語る米Microsoftのマーシャル・フェルプス氏
同氏はまた、「IT企業にとっては、著作権と特許権という、2つの重要な権利の保護が重要になる」と話している。著作権の保護に関しては、映画やソフトウェアなどの分野において、海賊版や模倣品の横行を阻止するための仕組みを提供。一方、特許権の保護では、独自に開発した機能を第三者に開示するとともに、相互運用性とイノベーションの継続を可能にするオープンな開発モデルを促進している。
マイクロソフトでは2003年12月に、知的財産権に関するポリシーの変更を発表。“オープンなビジネス”を新たなポリシーとし、競合製品へも知的財産であるライセンスの供与を許容することを発表している。「すでに100社以上の企業にライセンスを供与しているほか、米国で62大学、米国以外で58大学にもライセンス供与を行っている」とフェルプス氏は言う。
日本市場における具体的な取り組みとしては、2005年6月に東芝と特許クロスライセンス契約を締結。Windows CE技術をはじめとするマイクロソフトのソフトウェア関連技術と、東芝のデジタル家電関連技術を組み合わせたHD DVDプレーヤーを開発するとともに、DVDフォーラムの最新インタラクティブ機能を実現するiHD仕様の策定に向けた取り組みを推進している。
特許権に関する日本の取り組みについてフェルプス氏は、「国際的な知的財産基準の確立を可能にする仕組みの構築と維持における日本の取り組みを高く評価し、引き続きこうした取り組みの先導役を果たすことを期待する」と話す一方で、日本で特許権を取得するまでに時間がかかりすぎることを指摘。「変化の激しいIT産業においては、特許権保護において時間は重要なファクタ。時間がかかりすぎると権利の認定より技術の変化が先行してしまう恐れがある」と改善を求めた。
マイクロソフトがこうした取り組みにこだわるのは、特許権のライセンスがイノベーションのサイクルを維持強化すると考えているためだ。同社では、知的財産権の研究開発に年間で約70億ドルの研究開発費を投資している。
フェルプス氏は、「年間70億ドルの投資が、新しい知的財産を生み出し、それをライセンス供与することでパートナー企業との関係を強化できるのはもちろん、ライセンス収入を得ることができる。このライセンス収入を新たな研究開発に投入することで新たな知的財産を生み出すことができる」と話している。
「“なぜ知的財産権をオープンに供与するのか”とよく聞かれる。この答えは、非常にシンプルだ。例えば新しいPCの開発には、さまざまな知的財産権を使用することが不可欠であり、1社でだけで開発することは効率的でないからだ」(フェルプス氏)