Googleは法人向けソリューション「Google Search Appliance」(GSA)の新版を発表し、顧客に対し無料アップグレードの通知を開始した。GSAは大企業やそのIT部門向けに開発された検索アプライアンスで、新版には数々の新機能が盛り込まれている。GSAはファイヤーウォール内での使用を想定したもので、これまでは比較的「お堅い」製品だった。
しかし、今回の新版では、管理者がオンオフを設定できるものの、エンドユーザーの検索結果を検索エンジンに取り込み、他の社内ユーザーに提供するという、オープンでユーザー参加型の機能も設けられている。「KeyMatch」と呼ばれるこの機能を使うと、ユーザーは検索語に関する特定の検索結果を検索エンジン内に組み入れられる。例えば、あるユーザーが「ピクニック」という言葉で検索をし、イントラネットの社内ピクニックに関するページが表示された場合、この結果を追加できるのだ。この場合、追加された検索結果は、通常の検索結果を表示するページの上部、つまりコンシューマー向け「Google Search」でスポンサーリンクが表示される箇所に表示される。ということは、従業員が企業内の検索エンジンを悪用してスパム行為に走ることも理論上は可能なわけだが、ベータテストの段階ではそのような事例はなかったと、Googleの関係者は話している。検索結果を追加した人物の名前が結果と共に表示されることも、悪用を防ぐ効果があったのだろう。また、検索結果内のリンクに不適当と思うものがあれば、企業のエンドユーザーはそれを削除できる。ちなみに、KeyMatchは誰でも参加可能なグループ編集機能(およびリビジョン管理の手法)がwikiを連想させることから、もとは「Wiki KeyMatch」と呼ばれていた。
IT管理者は、不安を感じるなら、この機能をオフにしたり、アクセスを管理したりすることもできるが、できればしないでほしい。これは企業にとって興味深いソーシャルサービスの実験だからだ。
また、従来のGSAでは、社内ディレクトリや社内のファイルサーバ、データベースといった構造化データの検索が可能だった。そこにGoogleはEMCの「Documentum」やMicrosoftの「Sharepoint」といった企業コンテンツ管理(ECM)サービスへアクセス可能な機能、さらには他社のオープンAPIのサポートを追加している。加えて、管理者が検索結果の「偏り」を管理する機能も加わった。コンシューマー版のGoogle Searchに使われているアルゴリズム「PageRank」は、企業データの検索には必ずしも適さない場合もあるため、特定のデータベースの関連性を重く評価するなど、企業が望む方法で結果をランク付けできるのだ。
GSAの新版では、それぞれのユーザーが、社員全員に公開されているファイルだけでなく、閲覧権を持つ全てのデータを検索対象として見られるようになる。また、今回のリリースには含まれていないが、これから数週間のうちに「Google Enterprise Search」向け新機能として「Google Labs」入りを果たすとみられるのが、企業版「Google Docs」との統合だ。この機能が実現すれば、ユーザーは自身のプライベート文書と同時に、より公開度の高い文書の検索も可能になる。「Google Desktop Search」と組み合わせれば、Google Searchはユーザーが探す範囲内にある全てのビジネス文書、ファイル、データベースを検索できるツールとなるわけだ。
さらに、Google Enterprise Searchのユーザー向けには、検索スピードを速める新しいオートコンプリート機能が提供されている。これは「Word Wheel」(「Windows Media Player 11」に導入された新機能で、インクリメンタルサーチにより楽曲などを素早く検索するもの)のように入力された語句から検索語の候補を表示するだけでなく、ユーザーの文字入力に合わせて実際の検索結果をリアルタイムで変化させていくものだ。ほかにも、Google Enterprise Searchでは、検索結果の表示に「ユニバーサル検索」を利用できる。これはユーザーにリンクが表示されたページを提供するだけでなく、(Googleの検索対象となっている)Salesforce.comなどの企業向けデータベースをはじめとする情報源から得たデータを、構造化して表示するものだ。
最後に、Googleの企業向けサービスに関する他のニュースを紹介すると、Postiniの買収は早くも成果を挙げており、このおかげで電子メールのアーカイブがGSAで検索可能になった。しかし、およそ1年前に買収したwiki企業、Jotspotの技術の組み込みには苦労しているようだ。Googleはいまだにwiki製品を提供できずにおり、これが同社の法人向け製品ラインナップでは大きな穴となっている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ