7月27日、SBIホールディングスが「ソーシャルレンディング事業への参入について」と題するプレスリリースを発表した。SBIホールディングスが米国のソーシャルレンディング企業であるProsperとの提携を発表したのは2007年であるから、2年間のブランクを経てようやく事業開始へ向けた準備が本格化することになる。その間、日本ではmaneoがいち早く事業を立ち上げ、最近ではAQUSHという会社も事業を展開している。
これまでに存在しなかった新規市場を創出するには2つの方法がある。マーケットリーダーとなるか、フォロワーとなるか。リーダーは市場を席巻して優位に立てる可能性がある一方、誰も歩いたことのない道を想像もできない障害を除去しながら進まなくてはならない。一方のフォロワーは、リーダーの歩いた後を進めば良いので、同じ失敗を繰り返さないようにすれば、ビジネス立ち上げそのもののリスクは抑えることができる。しかし、先行するリーダーが市場シェアを押えてしまった後だと、フォロワー戦略も実効性を持たなくなる。
SBIがProsperとの提携を発表した際には間違いなくマーケットリーダー戦略かと思われたが、結果的にはmaneoが先行してスキームを作り上げ、日本におけるソーシャルレンディングのサービス開始に漕ぎ着けた。maneoの事業実現へ向けた道のりは容易ではなかったに違いない。米国においても先行するProsperはSECから業務停止を命じられるなど、マーケットリーダーとしての苦難を味わっている。
米国においてはマーケットリーダーであるProsperが圧倒的な優勢を保っているが、それはこのビジネスにおけるネットワーク効果が効いているだろう。ソーシャルレンディングは、借り手と貸し手のマーケットプレイスであるから、より多くの借り手(出品者)と貸し手(購入者)がいないと、マーケットプレイスとしての価値が上がらない。それ故に、初期に一定まで市場拡大を自ら図ることができれば、フォロワーにとっては苦しい戦いになる。それゆえに、米国ではProsperへ直接的に対抗するのではなく、学資ローンに特化したりといったニッチャーがすでに出始めている。
一方、日本では先行するmaneoが市場創出にエネルギーを注いでいるが、まだ新規参入者を諦めさせるほどには市場を拡大させるには至っていない。そうした中、SBIによるソーシャルレンディング市場への参入は、ある意味では朗報である。つまり、ソーシャルレンディングというマーケットそのものに対する認知を高める効果があるからだ。SBIがソーシャルレンディングを始めるまで、まだしばらく間があるようだが、その間にmaneoがどこまで市場拡大を図ることができるかにより、リーダーとしての先行者メリットを活かせるかが決まってくるだろう。
飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。
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