しかし、そもそも何でこうした技術が民間主導で開発されたのか。きっかけは確かにPayPalかもしれないが、記事の中にもう一つヒントがある。そのビジネスの立ち上げに関わるくだりの中で、何故ターゲット顧客を当初政府としたのかが語られている。
その中で、政府はいかに多くの開発者を抱えていようとも、その技術の先進性においてシリコンバレーに敵うことはない。なぜなら政府は優秀なエンジニアを確保することはできないからである、としている。故に、ことテクノロジの活用にあたっては、政府とシリコンバレースタートアップとのコラボレーションが実現するのである。
一方で、民間に頼ることによるリスクもある。Palantirは、そのビジネスの目的を「米国そしてその同盟国のもっとも深刻な問題を解決すること」であるとしている。しかし、ひとたびそのテクノロジが悪意あるクライアント、Palantir自身、あるいはその一従業員によって利用されれば、個人のプライバシーなどは容易に暴かれてしまうこととなるだろう。
スタートアップの一企業である限り、そこには投資家、経営者、従業員、クライアントなど、様々なステークホルダーが各々の意図を持って関与する。それだけに、企業を統治するガバナンスの仕組みはより重要になる。
イスラエルは、軍事産業にて培われたテクノロジを民間に転用することで有名である。これは、軍事が主要産業であるイスラエルの産業振興戦略である。
しかし、テクノロジのプラットフォームがよりオープンになればなる程、政府から民間という流れよりも、いかにして民間のテクノロジを政府が活用するかが重要になってくる。Palantirは、まさにその典型的な事例であると言える。
そして、その際に重要になってくるのが、いかに投資資金が新しいテクノロジの開発に回る仕組みを有しているか、また、企業のガバナンスを健全に維持できる仕組みを持っているかである。国家の争いの主戦場が情報戦へと移行する中、テクノロジを国家として如何に活用できる仕組みを作れるか、いかに優秀なエンジニアを育てることが出来るかも、重要な国力と言えるだろう。
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飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。
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