さまざまな分野で活躍し、成功を収め、脚光を浴びる起業家たちがいる。彼らの精神やスタイル、考え方には、共通した何かがあるのだろうか? 今回は、それを探るべく、DHRインターナショナル香港の社長であるChristine Greybe氏を訪ねた。
DHRは、米国シカゴに本社を置き、米国では第5位、世界でもトップ10に入る人材紹介会社(エグゼクティブサーチ)で、CEO、CFO、CCO、COOといった企業経営トップの人材紹介を手がけるという。2006年には日本にも支社を設立した。日本を含むアジア太平洋地域の総責任者であるGreybe氏は、南アフリカ生まれで元教師というユニークな経歴を持った人物だ。
彼女は、DHRは日本に注力しているとしながらも、日本は決して簡単なマーケットではないという。
「なぜなら、景気の低迷からまだ抜け出したとは言えず、円高の問題も非常に大きい。さらに、各企業とも良い人材を探すのに躍起となっており、人材の争奪戦が激化している。これらの状況から見ても、日本は非常にチャレンジングなマーケットだ」(Greybe氏)
しかし、それと同時にDHRは、非常に重要なキーマーケットとして日本を位置づけており、現在10名が常駐する東京オフィスを3年間で倍増する計画だとも語った。
彼女の関わる人材紹介というビジネスでは、人的ネットワークの構築が重要な意味を持つ。また、彼女自身も多くの人々と出会い、交流することを心から楽しんでおり、この仕事を「天職」だと感じているという。変化の激しいこの時代に、ビジネスを成功させるためには何が必要なのか。今回は、Greyby氏がこれまでに出会った人々の中から、特に成功した起業家たちに共通して見られた「11の資質」を語ってもらう。
#1:Passion(情熱)
最初に挙げられるのは「情熱」だ。
成功した人たちの人生の歴史を遡ると、その背後には、情熱を傾けた何かが必ずある。それは製品やビジネスに限らず、慈善事業であったり、社会貢献であったりする。また、スタートアップ企業で成功するためには、自分がそのビジネスや会社の「所有者」となることが必要だと私は思う。つまり、それは完全なるオーナーシップへの情熱であり、それが成功するための重要な条件だといえるだろう。
そのために彼らは、スポーツ選手のように「勝ちにこだわる」と同時に、演劇や音楽などのように「最高の自分を引き出す」努力を惜しまない。人生の局面で、絶えず情熱を傾けるような生き方をしてきた人たちが、成功している起業家には多い。
#2:Creativity(創造性)
成功者たちは、共通する要素として、他人が考えたこともないようなものを編み出す力、いわゆる「創造性」に長けている。
一つの例でいうならば、グローバルで展開している携帯電話の保険ビジネスがある。この会社のオーナーは、それまで誰も思いつかない新しいビジネスを作り上げた。それは、本来、オペレーターが提供している携帯電話の保険を「外部委託」のサービスとして携帯電話会社に提供するというもの。そのためにほとんどの人たちはこの保険サービスを提供している会社の存在を知らない。
しかし、こう言えば、思いあたる人も多いだろう。あなたは携帯電話を購入するために契約書に記入する際、用紙の記入欄に300円の修理保証契約という小さなチェックボックスを見つけ、そこにチェックを書き込まなかっただろうか。ほとんどの人がチェックを書き込むこの保険は、携帯電話会社の契約書に組み込まれているが、携帯電話会社自身が提供しているのではない。それが、まさに彼の会社が提供するサービスなのだ。
彼の会社は今や、グローバルで6000億から7000億ドル、日本だけでも1000億ドルもの収益をあげ、極めて成功したビジネスへと成長している。これと類似したケースでは、自分たちのオペレーションの一部をインドなどにアウトソーシングしてしまうことを考えた人たちも同様の創造性を持っていたといえるだろう。無から有を生み出すには、創造性は不可欠だ。