MRP起源説のERPとは異なる今日のERP製品
浅利氏も「MRP IIにAccounting(会計)が同梱され、さらにHR(人事、Human Resources)も追加されたクライアント/サーバモデルのアプリケーションのことをERPと呼ぶことはできる」と話す。ということは、一般的にERPシステムのコアと見られがちな会計機能は、歴史的には後から追加されたことになる。
そうであれば、基本的にERPは製造業向けの「生産管理パッケージ」と思われるが、実際には「現在のナンバー1のSAP製品も、ナンバー2のOracle製品も、Accountingから始まっている」というから、MRP起源説とも食い違うことになる。主流派と言われるERPパッケージは生産計画が先なのではなく、会計が先なのだ。どちらかといえば、生産は切り離され、会計と人事をまとめたパッケージの方が、多くの企業に導入されているようだ。
ITR、プリンシパル・アナリストの浅利浩一氏
また、ERPは基本的に大規模企業向けだと思われがちだが、業界第1位であるSAPの生い立ちを見ると、必ずしもそうではないことにも気がつく。同社のERP製品は、ドイツの化学メーカーのために開発した業務統合システムをベースに、パッケージ化して市販したのが始まりだ。大規模な一括処理がメインフレームで行われていた時代だから、オープンシステムを使っている企業や、メインフレームを採用したくない企業がターゲットだった。当時は、まさに中堅企業向けのアプリケーションだったのだ。
「それはコード体系を見ても明らかだ」と浅利氏はいう。ここで言う「コード体系」とは、勘定科目コードや部門コード、製品コード、得意先コードなどのことである。しばしばコード桁数が短いパッケージほど、中堅・中小企業向けと思われがちだ。しかし、OBCが2007年に発売したERPパッケージ「奉行V ERP」と比較すると、コードの桁数はSAPの方が短いという。かつて大企業がSAPを使った理由は、レガシーなメインフレームで新しい業務システムを動かしたくないと考えたとき、他に選択肢がなかったからだった。
「MRPまでは理論があり、学問があった。しかし、ERPには背景となる学問はなく、またEnterprise Resource Planningという言葉にフィットするような機能もなかった。新しい仕事のやり方とか、経営そのものを自動操縦してくれるような驚くべき仕組みもなかった」(浅利氏)
だが現在、ERPが広く普及していることを見ても分かるように、それでも企業にとってERPには大きな価値があったのである。その価値とは何なのだろうか。次回は、ERPの何が企業に受け入れられたのかについて考えてみよう。
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