最近、企業におけるソーシャルテクノロジの有効利用に注目が集まっている。そんな中、米国におけるソーシャルコンピューティング分野の第一人者として知られるForrester Researchのシニアアナリスト Jeremiah Owyang氏が来日し、ZDNet Japan主催のイベント「ZDNet Japan Social Technology Conference 2008」にて講演を行った。
テクノロジだけでコミュニティはつくれない
「オンライン・コミュニティ・ベスト・プラクティス−企業が今決断すべきこと」と題された基調講演にてOwyang氏は、オンラインコミュニティを活用したマーケティング戦略成功のための手法「POST」を日本で初めて紹介した。POSTは、「People」(人)、「Objective」(目的)、「Strategy」(戦略)、「Technology」(技術)の頭文字を取ったもの。Owyang氏は、「この順番の通りに実践することが重要。多くの企業はテクノロジを導入しただけで満足してしまうが、それは間違いだ」と念を押す。
POSTの「P」つまり「People」では、まず「ソーシャルテクノグラフィックスプロファイル」という方法で、コミュニティ参加者の積極性によって、参加者を6タイプに分類する。以下がその6タイプだ。
- Creators(クリエイター): ブログやポッドキャスト、写真などを積極的にオンラインで提供する人
- Critics(批評家): オンラインの情報に対してコメントしたり、5段階評価をつけたりといったことはするが、自分からはコンテンツを提供しない人
- Collectors(コレクター): RSSフィードの購読や、ソーシャルブックマークサービスでウェブページにタグをつけるといったことを積極的にする人
- Joiners(参加者): SNSなどに積極的に登録しプロフィール情報を書くまではするが、それ以上はあまりしない人
- Spectators(見物人): 自分の仕事のツールとしてビジネスブログやポッドキャスト、そしてその評価など、インターネット上の情報は活用するが、自らは提供しない人
- Inactive(不活発): ネットは利用できる環境にあるが、あまり活用していない人
Forresterの調査によれば、日本のインターネット市場はCreatorsが35%、Cirticsが32%、Collectorsが12%、Joinersが30%、Spectatorsが72%、そしてInactivesが19%という構成比になっているという。
ユーザー像を把握したら、次はPOSTの「O」だ。この段階で、ソーシャルテクノロジを活用する「目的」を定める。Owyang氏によると、ソーシャルテクノロジ活用の主な目的は以下の5種類だ。
- Listening(聞き込み): 顧客の洞察を聞いて製品の開発や改善に役立てる
- Speaking(情報発信): 企業のメッセージを伝えることで印象を変えたり、商品の宣伝をする
- Energizing(バズマーケティング): 熱心なファン層を刺激して、クチコミを活性化する
- Supporting(サポート): ユーザー間の互助ネットワークを作り出し、企業ではまかないきれない製品サポートをユーザー同士の連携で行ってもらう
- Embracing(抱え込み): ユーザー自身に商品への積極的な貢献者になってもらう(IdeaStormやSalesforceがこれに近い)