最近のIT業界で流行語を生み出したければ、既知のテクノロジを何か選んでそれに「2.0」という語をつけるだけでよいようだ。Tim O'Reilly氏によって生み出された「Web 2.0」という言葉はその中でも最もよく知られた例である。この言葉は、ウェブをベースとしたいわゆる第2世代のアプリケーションやサービスに関連したものを表している。
こうやって生み出されたWeb 2.0が人気を集めるにつれて、「2.0」というコンセプトを適用したテクノロジ群がIT業界に新たに出現したのは自然な流れだった(数年前に人気を集めた「ネクストジェネレーション」のようなものだ)。そして、従来からある単純な「VoIP」よりもエキサイティングな響きを持つ「Voice 2.0」が登場したというわけだ。
しかし、Voice 2.0とは実際どういうものなのだろうか。IT業界のたいていの用語と同じように、その答えは質問を投げかける相手によって違ってくる。
VoIPを格好良く言い換えただけなのか?
2006年12月、Paul Kretkowski氏はこの質問に対する答えをVoIP Newsウェブサイト上で模索した。同氏の出した結論は、Voice 2.0とは「IPを介して音声やデータ、ビデオ、インスタントメッセージをいつでもどこからでも送信可能にするためのテクノロジや概念を大まかに定義した集合体の総称」というものだ。
これはVoIP自体の定義のように聞こえるのではないだろうか?答えはイエスでもあり、ノーでもある。Kretkowski氏による定義は、電話による通話よりも格段に多くのものを含んでいる。事実、この定義は人気を集めているもう1つの流行語「ユニファイドコミュニケーション」の定義とよく似ている。
コンバージェンスが進む世界における電話
「コンバージェンス」(これも同じような流行語だ!)が今後の方向性であることはほぼ間違いない。ユーザーは、職場でワークステーションの前に座っていようと、自宅でデスクトップPCを使っていようと、ホテルの部屋や空港でノートブックPCを使っていようと、タクシーの後部座席でモバイル端末を操作していようと、そんなことには左右されずに、電話のメッセージや電子メール、テキストメッセージ、ファクスといったコミュニケーションすべてに対して、1つのインターフェースから迅速かつ容易にアクセスすることを望んでいる。
したがって、コンバージェンスはVoice 2.0における重要な要素である。コンバージェンスの様式には複数あり、最も期待されているものの1つとしてFMC(Fixed Mobile Convergence:固定電話と携帯電話の融合)がある。FMCの最終的な目標は、固定電話やVoIP、携帯電話サービスを完全に融合させることである。
この目標が達成されることを待ち望んでいる人の数は多く、わたしもそのひとりだ。わたしは現在、固定電話としてAT&T、VoIPとしてLingo、携帯電話としてVerizon Wirelessという3つの異なる電話サービスを利用している。これによって、障害の発生に備えた冗長性を確保できているものの、統合性には欠けている。
1つの電話番号で、こういったテクノロジの中から都度最も適切かつ費用対効果の高いものを選んで使えるようになれば素晴らしいのではないだろうか。それは例えば、自宅にいる時には固定電話サービスであるかもしれない。そして移動中であれば、その番号に電話がかかってくると携帯電話が鳴り、IEEE 802.11ネットワークを利用できるエリアにいればVoIPを使い、そうでなければより高価な携帯電話サービスに切り替えるといった具合だ。
VoIPと従来の電話との争いの終焉
こういったコンバージェンスが実現すれば、VoIPと従来の電話が対立するこれまでの状況が変わってくる。これらはもはや競合関係にはなくなり、より優れた総合的なコミュニケーション体験をユーザーに提供するべく連携するようになる。
VoIP Newsウェブサイトに2007年8月初めに掲載されたRobert Poe氏の記事によると、Voice 2.0の最大のメリットは、自分の電話番号を1つ持ち、利用したいサービスやプロバイダーのタイプにかかわらずその番号を使えるようになることだ。そうなれば、電話番号の変更に伴うわずらわしさを避けるために同じ電話会社に縛られなくても済む。これは、(場合によっては)現在でも利用可能な番号ポータビリティよりもはるかに進んだものである。
実際に利用されているVoice 2.0
Voice 2.0は将来的に実現されるであろう素晴らしいアイデア(または理想)に過ぎないというのは間違いであり、現在すでに利用されている。最も話題になっているVoice 2.0サービスとして、2007年7月にGoogleによって買収されたGrandCentralがある。
GrandCentralの仕組みは次のとおりだ。あなたの使っている電話番号(自宅、職場、携帯電話)のどれにも、あるいはすべてにも電話をかけることのできる電話番号が1つ割り振られる。これを使うと、電話がかかってきた際にはどの電話につなぐのかを発信元に応じてコントロールできるのだ。そのため、例えばメアリーおばさんから電話がかかってきた場合に、自宅の電話は鳴らしたいけれど職場の電話は鳴らしたくないという要望を実現できる。
また、電話に出る前にかかってきた電話を選別し、相手の言っていることを聞くことも可能である。これは発信者番号表示以上の機能であり、従来からある留守番電話のメリットを再び手にすることができるようになる。つまり、録音中のボイスメールを聞いたうえで、その相手と話したいかどうかによって電話に出る(あるいは出ないようにする)ことができるのだ。
ボイスメールサービスに切り替えたことで使えなくなった留守番電話の機能の1つとして多くのユーザーが残念に感じていることに、通話の録音機能があった(録音が開始される際には、電話をかけた方にもかけられた方にもそれが通知される)。GrandCentralのサービスでは、通話を録音したうえで、それを自分の電子メールアドレスに送信し、好きな期間だけ保存しておくことができる。
筆者Debra Littlejohn Shinderについて
Windows Server SecurityのMicrosoft Most Valuable Professional(MVP)として、多数の書籍や技術文書などの執筆、編集作業に力を入れながら、テクノロジーコンサルタント、トレーナーとしても活動する。警察官、警察学校のインストラクターとして活躍した経験を持つ。専門はMicrosoft製品とセキュリティ。
関連情報
-
VoIPへの移行は担当者の趣味なんかじゃない--論拠を示して経営層を説得する
PSTNからVoIPへ移行すれば年間何千ドルもコストを削減できる?それは素晴らしいことだ。そのプランで経営層を説得できれば、何も言うことはない。 - VoIPの展開:コンバージェンスのメリットとデメリットを比較する
「通信」 の新着情報
-
RSUPPORT、簡易VPN機能を搭載した遠隔コントロールツールの新製品
RSUPPORTは、リモートコントロールツールの新製品「RemoteView 5」を発表した。リモートアクセス、リモート監視、リモート保... - NTTPC、パンデミック対策向けリモートアクセスサービス追加
- ノーテルのメトロイーサネット事業、Cienaが買収へ
- OKIネットワークス、スモールオフィス向けIPテレフォニー製品「IPstage 1000」を発売
- TIS、企業システムのクラウド対応に向けたITインフラ最適化サービス「IT@VSOP」を提供開始
- 通信 一覧へ »
「シンダー先生のシステム管理ゼミナール」 のバックナンバー
-
マイクロソフトのVoIP市場進出への準備は万全?OCSをレビュー
マイクロソフトのVoIP製品「Office Communications Server」に搭載されているソフトウェアベースのVoIP機能は、既存のPBXシステムと統合することも単独で使用することも可能である。今回はOCSの機能を取り上げる。 -
企業の事業継続計画(BCP)に盛り込んでおくべき10項目
-
料金、音質、信頼性…あなたがVoIPに求めるものは何?
-
VoIPは詐欺師にとって好都合なテクノロジなのか?抜け道をふさぐポイントを探る
-
本当に意味のあるIT資格を目指そう:米国ITプロが選ぶ10の有力資格
- シンダー先生のシステム管理ゼミナール 一覧へ »
-
CRMの限界を超える!「顧客経験価値マネジメント」実現の5段階
- 日本モバイルインターネット端末市場分析 〜2008〜2012年のMID及びスマートフォン...
- POSデータを活用し、売上アップを導く「分析力」とは?
- BIベンダーの選び方 −BIベンダー選定のための評価フレームワーク
- 【導入事例集】多業種から評価されているWeb会議システム、24社の導入事例をご紹介
- 【日産自動車:BI導入事例】連結対象の36社からの情報を元に車種別損益管理を実現
- 企業コスト削減の傾向と対策 〜最新アプローチのトレンド〜
- ストレージ問題の課題に対する解決方法
- iPhoneをビジネスで活用する時代へ〜ビジネス&モバイルのミライ〜
- HP LeftHandが仮想化環境の構築の効率を向上させた3社の事例集
企画特集
-
【最終警告】パンデミック対策特集
サービス品質を保証するためのリスクマネジメントとは -
グリー、3人のエンジニアが語る仕事への想い
連載第2話、元SIerに聞くリニューアルと開発の舞台裏 -
大丈夫?あなたの会社のセキュリティ対策
中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティを考える -
電力に"ふた"をする独自の省エネ機能とは!?
動的に電力割り当ても可能なHPの最新鋭ブレードに迫る -
マネジメントの「コラム」と「コネタ」
今日のキーパーソンは誰? -
―エン・ジャパン厳選求人☆毎週更新―
ハンゲームの社長が語る・人材とサービスの在り方 -
企業ITシステムの企画、構築、運用のイロハ
戦略的なITシステムのために、今考えるべきポイント -
100万円で実現!中小企業の情報漏えい対策
中小企業の課題!?セキュリティ管理者不在でも大丈夫 -
高まるiSCSIストレージへの注目度
ストレージシステムの4つの課題とiSCSI導入のメリット -
急増するオンライン犯罪への解決策!
オンラインサービス保護ソリューション -
J-SOX法制定により内部統制の整備が急務に
重要性高まるActive Directoryの課題と対処法を公開中 -
容量制限によるメール消去は一切無し!
全てを保存するメールセキュリティSaaSが登場
-
7. ホットスポットと同時並列性分析について
この3分間のビデオは、Intel Parallel Studioの一部であり、アプリケー... -
8. Valarray
この5分間のビデオでは、Intelコンパイラの1次元Valarrayデータ構造に対...
