放送の視聴機革命が、通信融合の未来を変える--PTP有吉社長に聞く

高瀬徹朗

2008-04-24 16:32

 地上波全チャンネル、24時間すべての番組を録画する――。

 優れたベンチャー企業を選出する「Tech Venture 2008」に選出されたPTPの提供する大容量ハードディスクレコーダー「SPIDER PRO」は、そんなテレビ大好き人間の夢を叶えてくれる画期的製品だ。

 すでにプロ用として優れた効果を発揮することは折り紙つきながら、その存在を知る一般ユーザーから製品を求める声が絶えないという。

 「SPIDER」を世に送り出した同社代表取締役社長である有吉昌康氏もまた、自他共に認めるテレビ好き。今後、どのようなビジネスモデルを描いているのか、語ってもらった。

シンプル、直感、見つけられる

――PTPについて教えて下さい。

 1998年、米国で発表されたハードディスクレコーダー「TiVo」との出会いが事業の出発点です。ハードディスクレコーダーの登場はテレビ放送サービスとインターネットの接続を可能とし、革新的にライフスタイルを変えるものにつながると感じさせました。そして2000年5月、PTPを設立してイメージを具現化させるために動き始めました。

 事業内容はハードウェアを作るだけではなく、SPIDERに関わるクライアント、サーバー両方のソフトウェアを自社で開発し、ライセンス供与もします。また、SPIDERを通じて顧客に継続的にネットサービスを行っていくことによりユーザーの皆さまがSPIDERで録画した映像をとことん楽しんでいただく新たな視聴体験を可能にします。

 例えば、出演者の詳しいデータを配信することで通常の番組表だけではヒットしない番組をSPIDERでは探し出すことができますし、そうやって新しく発見した番組を仲間に伝えて情報を共有することも簡単にできます。SPIDERを中心に、ハード・ソフトすべてをコントロールしつつ、お客さんの意見をフィードバックし、常にサービス向上に努めている、というのが弊社のビジネスです。

――「SPIDER PRO」について。

 約1週間分のテレビ番組やCMを最大8チャンネル分同時に自動録画し、蓄積した映像を保存・検索することができる大容量のハードディスクレコーダーです。つまり、1週間分の放送内容がいつでも好きなときに視聴できるという、単純明快な製品です。古い映像が自動上書きされるため、手元には常に最新1週間分が蓄積されることになります。また、優れた検索機能により、タレント名や番組名に限らず、「聖火リレー」などフリーのキーワード検索ですべての露出シーンを見つけ出すことができます。

 もちろん、資料として永久保存しておきたい番組やCMは保存・管理可能。また、必要な範囲だけの抜粋、簡単な編集、DVD書き出しも可能。書き出したDVDは、市販の端末で再生可能です。頭だし再生にも優れ、チェックしたいシーンのみをピタッと呼び出すことが可能です。

 リモコンは、十字キーを中心としたシンプルな構成。その十字キーと決定ボタン、BACK、MENUの4種類のボタンだけで、簡単に使いこなすことができます。ユーザインターフェイスは、製品を開発する上で特に強いこだわりを持ちました。約2年間、50世帯の一般家庭でのモニターを通じてゼロベースで本当に使いやすいリモコンとGUIを設計・改善していきました。

――自社で製品を開発するまでの経緯は。

画像の説明 有吉氏の起業のきっかけとなった「TiVo」が紹介された米雑誌『SUCCESS』

 「TiVo」を見て衝撃を受け、ビジネスイメージを固める段階においては、まず、ユーザからの情報収集作業に努めました。それらをまとめ、家電メーカーに商品開発提案を行うためです。実際、レポートやデザインをまとめて提案を行いましたが、紙だけではメーカーは動いてくれません。そこで、プロトタイプ開発に着手します。

 2005年、完成したプロトタイプをモニター世帯に配布、実践的な商品テストに入ります。そこからのフィードバックを製品に反映しているうちに、ついに「自分たちで本製品開発まで成し遂げよう」と決意しました。これは、ソフトからハードまですべてに責任を持つことで、ユーザーから寄せられる要望をすぐに反映する優位性を確信したことによるものです。

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